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「末澤く、」
「お前なぁ！」
物凄い剣幕で壁に押し付けられ、所謂壁ドンってやつなのだけど末澤くんの方が背が低いし、怒ってるしでキュン要素はひとつも無かった。
「黙っていなくなんなよ！」
「え、」
「みんな色々あって、今不安な時期で！
なのに、挨拶もないなんて！この薄情者が！」
その目には、薄く涙が溜まっていて
訳が分からない。
「…俺がキスしたせいか」
「え」
「正門と付き合いたいけど、俺とのキスのこと気にして東京に逃げたん？」
これ以上末澤くんが暴走したままだと、
私は誤解されたまま責め立てられることになりそうだったので、申し訳ないけど話は遮らせていただく。
「俺は、…お前が望むならなかったことに、」
「私、今映画の撮影準備期間中でして」
「…は？」
そこで末澤くんの視線がようやく下に降りて、私が水着姿だということを認識してくれて、バッと離れて後ろを向かれた。
…いや、思春期か！
「あと2週間ほど東京に滞在しますけど。
帰りますから、大阪。」
「え？え、そうなん？」
末澤くんが視線を投げたのは、気まずそーに気配を消してドア付近に立っていた橘さん。
末澤くんを見つめてゆっくり深く頷く。
「あと、誰が正門くんと付き合うって？
…付き合ってないわ！そんで？キスを無かったことに？
…馬鹿なこと言わないでよ、無かったことになんか絶対させてやんないから！」
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作者名：x | 作成日時：2023年9月29日 8時
