あのコ、きらい。Ⅳ (ページ6)

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2019年 4月

「…は？桃井が東京に帰った？」

グループでの公演のリハを終えて、レッスン場に行くとJrたちの間はそんな話で持ち切りだった。

東京に帰ったって、そんな急に。

去年桃井の誕生日前日、正門との抱擁を目撃してからというもの…

話せていない。そのうちに？

「斗亜が2月くらいに廊下で大倉くんと桃井さんがそろそろ帰るって話してるとこ聞いたらしいっすわ」

その話を聞いた直後から、桃井はレッスン場に来なくなってもう2ヶ月が経ったと。

急いでスマホを開いて電話をかけたが、繋がらず

電源が入っていないというアナウンスが流れる。

「…こんなん、無しやろ」

「誠也くん、」

「あのアホ女」

どこ行くん！と大晴に呼び止められて、振り返る。

そうだ…今は、俺にもグループがあって単独行動は、

こいつらの足を引っ張るってことにもなる。

俺にはもう守るべきものがあって、…昔とは違う。

諦めようとした俺に、

「…おー！末澤腹痛いん！？よし、よしわかった！

今日は帰れ！な！」

「…あ、そ、そやね。誠也くん無理しすぎはあかんわー」

リチャと正門が下手な演技で扉へと俺の背中を押す。

「誠也くん、ゆーっくり休んで"明日"には戻ってきてくださいねー？」

佐野まで、俺に手を振る。

「いやけど、」

「どうせここいたって集中できひんねんから、ちゃんと話してき。

…俺らも、こんな最後は納得してへんしな。」

リチャの言葉の後で、はいどうぞと正門から荷物を受け取った。

ほんまにごめん、ありがとうと伝えて駆け出す。

「あれ、末澤どうした？」

「腹痛です！」

「いやめっちゃ走ってるけど…」

「トイレ！トイレ漏れるー！言うてたんで！漏らされたら困るんで帰らせました！」

その後ろ姿を横山くんに見られて、2人が必死に弁解してくれたのは帰ってきてから聞いた。