あのコ、きらい。Ⅳ (ページ49)

今日:56 hit、昨日:559 hit、合計:184,728 hit

@４９ページ49

x

レッスン場の壁にもたれて、一応丈に末澤くんと無事会えたことを伝えた。

「おーさーわーがー…

てんてんどこ！てんてん！あ、あった。

せーしーまーしー…た」

「声に出とる、全部出とる」

「すーえーざーわー…あ、違う！なんでカタカナ！？」

一生懸命キーボードを人差し指で打つ私を隣でケラケラ笑ってた末澤くんは、そのまま私の肩に頭を乗せる。

Aお騒がせしました。末澤くんとは無事合流、和解しました。

ようやく送信して一息つくと、急に隣の末澤くんに意識が向いて内心ドギマギしてしまう。

…髪の毛がくすぐったいし、末澤くんの匂いがしてクラクラする。

"ちなみに俺、今日誕生日やねんけど"

石のように固まってる私にもお構い無しで、

末澤くんは私の手を握って遊びながらそう言った。

それは、ちゃんと覚えていたけど

大阪に向かう私は今から"振られる"もんだと思い込んでて、

そんな女からのプレゼントはゴミになるだけだし、

実際、大阪に行くことを決めたのは数日前で

プレゼントを用意する間もなかった。

「私じゃダメですか？」

「…は？」

「私がプレゼントじゃ、ダメですか？」

そう言うと、顔を上げた末澤くんは私を凝視して固まった。

しんとしたレッスン場はなかなかに蒸し暑くて、だらりと汗が垂れる。

「お前、それどういう意味か分かって言ってんの？」

「え？…あ！違う！その、何でもするって意味で…

何でもするっていうのは、言うこと聞くっていうか…

あの、その」

無意識に爆弾発言をしてしまったことに気がついて、

慌てふためく私を末澤くんは面白そうに見守る。

「なんでもか」

「違う、そういう意味じゃ、」

「でも、言ったもんな？自分で」

ジリジリと詰め寄られて、床に倒れた私の上に末澤くんがのしかかる。

「…俺も」

「え？」

迫る唇に、ギュッと目を閉じたら

上からまた甘い声が降ってきて目を開けた。

正直、後悔した。

「俺も、桃井が…Aが好きやで」

そんな、心から愛おしいみたいな顔で

髪を撫でられて。

額に1つのキスをして離れてく末澤くん。

…もっと、って思ってる自分がいる。

私は、末澤くんといることで本当にワガママになったと自覚した。