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まだ1年も経っていないのに、既に懐かしいその廊下を歩いて
微かに聞こえる音の方へと足を向けた。
扉にある小さな窓から中を覗くと、顔は見えなかったが見慣れた赤いシューズと人の足が見えた。
え、死んでる？
ガチャッと扉開いても、未だ寝転がったままのその人。
「…すんません、もう閉めますよね今どきます」
私の顔も見ずに起き上がったその人に、意を決して声をかけた。
「…久しぶり、です」
私の声に、片付けをしていた手が止まる。
恐る恐るという表現がピッタリなゆっくりした動作で、彼は振り返った。
「は…？桃井？お前、なんで…」
"会いたくなかった"そう顔に書いてある。
…始まる前に終わってしまったんだとしても、
ちゃんと、お別れを言わなきゃいけない。
好きです、とこんな気持ちを持たせてくれたことへの感謝を伝えたい。
「私、末澤くんが好きでした。いや、好きです。
今でも好きです、大好きです。
それだけは、最後に伝えたくて。」
「…何言うてんねん」
「末澤くんが私に飽きちゃったっていうのはわかってます。
分かってるんですけど、」
しばらくの沈黙の後、末澤くんがはぁ？って顔して私に手のひらを向けた。
「おい、ちょっと待て」
「待ちません」
「いやマジで待て、俺が？お前に飽きた？」
「はい」
「飽きたのはお前やろ！？あんな週刊誌にすっぱ抜かれといてよう言うわ！」
何しれっと人のせいにしてんねん！とぶちギレられて、
私も私ではぁ！？とキレ返してしまった。
「人のメール2ヶ月も無視しといてよく言いますよ！」
「やから、それはお前やろ！こっちが何度送ったって何の返信もよこさんで！」
「はぁ！？来てません！」
「送りましたー俺は絶対に送りましたー！」
見してみ！と手を出されて、私もドヤ顔でスマホを差し出す。
「あ？お前の携帯出せ言うてんねん」
「だから！これ！私のスマホです！」
「…は？お前、いつスマホに変えてん」
それもメールしましたけどね！と思いながら、6月ごろですと伝えた。
末澤くんの手でするりと開かれたスマホは、「…ロックくらいかけろ」とか色々怒られながら、
確かに私がメールを送り続けた証拠が残っていた。
「…s」
「なんですか？」
「…メアドのここ！大文字のsやなくて小文字や」
"メアド間違えてたら、届くわけないやろ"と末澤くんが頭を抱えた。
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作者名：x | 作成日時：2023年9月29日 8時
