あのコ、きらい。Ⅳ (ページ41)

今日:12 hit、昨日:559 hit、合計:184,684 hit

＃４１ページ41

x

2020年6月

「…」

「おい、末澤！末澤！」

目の前でぶんぶん手を振られて、驚いた。

もう、なんなんと丈が若干怒っている。

「ごめん、何？」

「いや、さっきからどうしたんって。

スマホじいっと見て」

久しぶりのレッスンだったのに、身が入らないわけは言えなかった。

「ほら、色々な？グループのこと考えとって」

「急に最年長やん」

「そらそやろ…佐野の足引っ張るわけにいかへん」

最年少のあいつには、まだまだ可能性もチャンスもあるんだろうけど。

俺はこのグループに賭けてる。

俺が歳食ってるせいで佐野の時間まで無駄にさせたくはない。

丈が珍しく茶化しもふざけもせず、俺の肩を叩いて立ち上がった。

「姉さんに相談してみればええやん」

「…それは、」

「ほら、呼ばれてんで？最年長」

「…お前もな」

丈の一言に振り返ると、あいつらが確かに俺を呼んでいて

扉の向こうからは大吾が丈を呼んでいる。

お互いに肩を叩いて、今それぞれの居場所へと急ぐ。

そう、今は立ち止まってる暇なんてない。

出口が見えなくたって、信じて走るしかない。

未来のことも。…桃井のことも。