あのコ、きらい。Ⅳ (ページ40)

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「桃井ちゃんってほんとにガラケーなんだ！？」

バラエティー番組で一緒になった俳優さんが大笑いしながら、私の手からガラケーをすっと取り上げた。

…この人なぁ、女遊び派手で有名なんだよなぁ。

「うわー！なっつかしー！」

勝手にパカパカされるガラケー。

…ああ、もうその携帯接合部が

首すわってない赤ちゃんみたいにグラグラしてるから、

あんまり乱暴に使わないでほしい。

…買い換えろって話なんだけど。

もったいなくて。

だって、スマホ高くない！？

ガラケーで生きてた人間がスマホに変えるの躊躇するの、絶対この値段故だと思う。

『いや、姉ちゃん俺にはすんなりスマホ買ってくれたじゃん』

「颯はほら…学校でいじめられたりとかさ？

仲間外れにされたら可哀想じゃん…」

『姉ちゃんってホント自分のことになるとケチだよね』

颯にも呆れられる貧乏性。

だって、しょうがないじゃん。

所帯臭いとか言われたって今更変えられない。

バキッ

て音がして我に返って、目の前の俳優さんを見る。

プランと画面が垂れたガラケーと青くなってる俳優さん。

「マジごめん！ほんとにごめん！わざとじゃないんだよ！」

「わかってます…

あ…まだ電源つくわ。大丈夫、セーフです」

「…いや俺にこんなこと言う資格ないと思うけど、

買い替え時じゃない？いや絶対買い換えるチャンスだよ！」

ほぼ分離したガラケーを平然と使い続けようとする私に、彼はドン引きしていた。

だから彼に言われたから、というわけではなく

「それさ、使い続けて下手したら火事になるよ」

という志穂の助言で、私は人生初のスマホを購入した。