@３９ ページ39
x
「ていうかさ、なんで付き合ってないの？」
同じ頃、大阪でもまったく同じ光景が広がっているなんてつゆ知らず。
YouTube撮影後、美海が不思議そうに首を傾げながら聞いて来た。
それに対して雪も「普通にもうデキてるんやと思ってた」と続いた。
「…なんでって、アイドルだし」
「だし？」
「末澤くんデビュー前だし、」
「だし？」
「…告白はされてないし」
ええー？つまんなぁい！と美海がクルクルと椅子ごと回る。
つまるつまらないの次元の話じゃないんだけどな。
「ん？まってまって、両想いなのは確実なの？」
「それはー…」
正直、分からなかった。
だって、一言も好きとか言われてない。
好きじゃないから、付き合おうって言われなかった？
キスしたのに？
…あ、じゃあ、あれは私がキスシーンを嫌がってたのを見兼ねて、仕方なくだったってこと？
「さては、Aちゃんキスしたな？」
横から覗き込んで来た雪にびっくりして、何も言えない。
鋭すぎるし、嘘は言えない空気感。
「えー！？末澤最低！」
と美海が眉間にしわを寄せる。
「付き合ってないのにキス…破廉恥な」
と、うちで一番純情な真野が両手で顔を覆った。
「"A、お前の唇美味そうやん"
"いやん！末澤くんだめっ！もう！"」
なんて真顔で言いながら、雪は楽屋に置かれたお菓子を並べて「キス」の文字を作り始めるし…
ていうか、私と末澤くんのイメージどんなだよ。
「…とにかく、関西Jr好きになっちゃったってだけでも大問題なのに
付き合えるわけないでしょっていう話で…」
「なんで問題なの？」
「え」
「だって、関西Jrって言ったって未成年ってわけじゃないし、
なんなら私らよりいい大人なわけでしょ？」
「そりゃそうだけど、」
志穂の言葉に何も言えなかった。
だってそれは、結局私たちがアイドルじゃなかったらの話になってしまう。
彼がデビューを目指し今も頑張っているならなおさら。
今、この関係に名前をつけるべきではない。
「…今は、末澤くんにとって大事な時期だから邪魔したくないんだよ。
ね、この話はおしまい！」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 767人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：x | 作成日時：2023年9月29日 8時
