＃３８ ページ38
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雑誌取材の休憩中の楽屋。
弁当を開いた俺の目の前に突然ぬっと差し出されたスマホ。
そこに映るのは、なんだかちょっとマヌケな面の桃井。
「…で、これを俺に見せてどうしろと」
「いや、末澤が彼女と遠距離でさみしいやろうからって雪が気ぃ利かせて送って来てくれた」
「誰が！」
慌てて立ち上がると隣に膝立ちしてたリチャが
え、だから雪が。と無表情で告げる。
「ちゃう！誰が誰の彼女や！」
「桃井が末澤の彼女」
「ちゃうわ！」
大きな声を出しすぎて、楽屋の隅でギターを弾いてた正門まで寄って来て
「え、まだ付き合ってへんかったんですか？」
「…まだってなんやねん」
「へぇ、キスまでしといて」
正門はおそらく何の気なしに言ったんだろうが、
リチャが「キス！？」と口を抑えた。
俺も俺で飲みかけた水を吐きかけた。
「おま！？なんで知ってんねん！？」
「レッスン場に忘れ物とりに行ったら見ちゃって」
あれはさすがにきつかったですわぁと苦笑いするもんだから、
それ以上責めるわけにもいかず。
「ヤリ捨てはあかんわ」
「…言い方気ぃつけろ小島」
いつのまにか戻って来てた年下組にまで、やいやい言われて頭を抱える。
「末澤、雪から伝言。
"Aちゃん泣かせたらおしりペンペンだぞ"って」
「…本城マジで意味わからんあいつなんなん」
「雪は多分佐野の兄ちゃんくらいぶっ飛んでる」
ああでもあそこまでではないか？いやでも、なんてリチャがどうでもいいことで悩んでいる。
ていうか、
「なんで俺にも黙ってたん？本城と幼なじみって」
「聞かれんかったから」
リチャは平然とそう答えるけど、納得いかない。
「…ならお前が本城説得してくれてたら、もっとはよCRASHは5人に戻れたんちゃうんか」
「いや、そこまで踏み込むのはいくら幼なじみでも…って思って静観してたら、末澤思っきり踏みこんだよな」
お前ってそんなお節介な奴やったっけ？と、リチャがクスクス笑う。
…そりゃ、俺やってびっくりやわ。
自分のキャラじゃないことばっかりして、だけどそれがなんか…苦じゃなくて。
ちょっと楽しんでたり。
「…桃井のがうつってん。
全部あいつのせい」
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作者名：x | 作成日時：2023年9月29日 8時
