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「桃ちゃん、行かんでー！」
「…大橋くん、はいティッシュ」
箱ごと渡したティッシュが、あっという間になくなっていく。
エコじゃないな。
「私、大橋くんのダンス好きです」
「う、う！」
「歌も、益々上手くなってて…本当に尊敬してます。
ファンの人への向き合い方も、仕事へのマインドも、私の憧れです」
「あ゛い！」
「また悩んだら、…あの、私でよければですけど
何時間でも話聞きますから」
「うん、じゃあ毎日電話するな？今日の服どれがええかなって」
「…前言撤回していいですか」
涙と笑顔でぐちゃぐちゃの大橋くんを、汚ないねんと言いながらも横で支える丈。
「丈」
「あー俺はそういうのええわ！誰か次ー」
「丈がいてくれてよかった」
「…ええってもう、」
しっしっと手で追い払われても、
ここで言わなきゃきっと照れ臭くて次は無い気がするから。
「丈がいなかったら心折れてたかもって時、何回もあったよ」
「…あっそ！」
「いつも、助けてくれてありがとう。
ほんとに、言い足りないくらい感謝してるの。
ありがとうね」
ぐって堪えた涙が、頬を伝う寸前で上を向いた丈が
「こっちこそ、ありがとうなA」
姉さんでも、あんたでもなく、初めてそう呼んでくれた。
「リチャくん」
「はいなんでしょ」
「なんで雪と幼馴染って教えてくれなかったんですか？」
「え、聞かれんかったから」
平然とそう言ってのけるリチャくん。
…リチャくんらしいなぁ。
「まぁ、いつでも京都遊びに来や。
雪連れてさ。」
「はい、そうします」
元気でなと手を差し出され、握り返す。
飄々としてるけど、実は一番あったかい人。
末澤くんと話せなくなった時、さりげなく何度も話すチャンスを作ってくれて
ライブでもよく助けてもらった。
「…もうええな？全員挨拶したな？」
リチャくんと握手していた腕を掴んだのは、末澤くんで。
「え、あ、え！？」
「桃ちゃんばいばーい！」
「お元気でー！」
私のスーツケースを片手に引きつつ、
ぐいぐいと、強引に引っ張られていく。
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作者名：x | 作成日時：2023年9月29日 8時
