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「桃井さん、お世話になりました」
「西畑くん」
「『青い海で』！絶対観ます！３回観ます！」
「…えっと、ありがとうございます？」
「大吾くん、桃井さん引いてます」
熱烈な瞳に若干引きつつ、握手を交わしたらなかなか離してもらえなくて
周りが引き剥がしてくれてようやく解放された。
"青い海で"というタイトルがついた私が人魚役を演じた映画を、3回も見ると豪語する西畑くん。
…ほんと、へそピ好きだな。
「…お元気で」
「りゅちぇくんも。東京来たら連絡してください」
「…飯おごってくれるんやったら、遊んでやらんこともない」
「あはは、分かりました。ありがとうございます」
彼の邪険な扱いは、愛情の裏返しだと勝手に解釈している私。
キラキラした瞳がいつにも増して輝いてるのと、ずっとムスッとしていじけてるのは、私と離れることを少しは寂しいと思ってくれてるんだろうな。
そう口に出したら絶対「調子乗んな！アイラインガッタガタになる呪いかけんで！？」とか言われそうなので言わない。
「桃井さん」
「あ、長尾くん道枝くん高橋くん」
なにわ男子結成後は西畑くんや丈に混ざってよく話した3人。
「次会う時までにそのえぐいダサい格好なんとかしといてくださいね」と長尾くんが笑って、
「また一緒にドラマやりましょう」と道枝くんが目に涙を浮かべる。
そして、
「Aさん、マジで最後なんでもっかい言いますね」
「…どうぞ」
「マジで顔面だけはほんっまにタイプっす。ありがとうございます」
「…こちらこそありがとう」
高橋くんはずっとそうやって言ってくれてたなぁ。
…ずっと顔面”だけ”っていうのは気になってるけどね。
「桃井さん、」
「佐野くん」
彼はよく服のセンスがないって私と一緒にいじられてて、若干気の毒だったな。
そもそも独特な服を選んでしまいがちな私と、
オシャレな服を持ってるはずなのに組み合わせ方が下手くそなだけの彼とじゃ
随分違うと思うのだけど。
「俺目標があって、」
「うん？」
「いつか、FNSで桃井さんと一緒に歌いたいです！」
きゅるきゅるの瞳が、強い眼差しに変わって
彼が本気で目指してくれるなら。
「うん、いつか必ず。私も頑張る」
頷いて微笑んだ私が気配を感じて振り返った先。
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作者名：x | 作成日時：2023年9月29日 8時
