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「この間、会いに行った時に
もう来ないでって言われたんです。
なんで急に？って思ってたら、
色々試した治療法がダメで…年明けに手術になったみたいです。
きっと、私に心配かけたくなかったんだと思うんですけど」
それでも、言って欲しかったっていう私の思いを
正門くんは、ただ黙って聞いてくれた。
「誠也くんは…」
「え？」
「誠也くんは、このこと知らんのですか？」
なんで、ここで末澤くんの名前が出てくるのかは少し疑問だったけど、「知らないですよ」と言わないで欲しいと伝えておいた。
これ以上、迷惑かけたくない。
「誠也くんのこと、好きなんですね」
「え！？」
あはは、図星かぁと正門くんは勝手に納得してしまって、慌てた。
「違います、好きじゃない」
「俺は好きです」
「末澤くんを？」
「Aさんを、です」
ごめんなさい、こんな流れで言うつもりやなかったのにと正門くんは頭をかいた。
扉の向こうの地面に、薄く白い雪が溜まっていることに気がつく。
雪が降ってることにも気づかなかったのに、それでも着実に雪は降り積もって…まるで私の末澤くんに向ける想いみたいだと思ってしまった。
…認めない、つもりだったのにな。
「ごめんなさい、正門くん」
正門くんと閉じ込められたあの日から、2人でディープな音楽の話をするのが楽しかった。
どこのバンドのベースがかっこいいだの、あそこのバンドのギターソロがイケてるだの。
こんな曲やりたい、あんな歌を歌いたいってぶつかり合って、
一緒にパフォーマンスして。
正門くんがきっかけになって、仲良くなった子だっていた。
たくさん、良くしてもらったのに。
その気持ちに応えることができなくて。
「私、嘘つきました。…末澤くんが、好き」
正門くんの気持ちに応えられないのに、自分の気持ちに嘘つき続けるのはフェアじゃない気がした。
その時の私の笑顔は、正門くんにどんな風に見えていたんだろう。
それでも少しだけ間を空けて、
「…知ってましたよ、ずっとAさんのこと見てたんで」
痛々しく微笑んだ正門くんに、向ける言葉は
「こんな私を…好きになってくれて、ありがとうございます」
これ以外に思いつかなかった。
この翌日、私は20歳の誕生日を迎え例年の如く
関西Jr数名に盛大にお祝いしていただいたのだが、そこに末澤くんの姿はなかった。
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作者名：x | 作成日時：2023年9月29日 8時
