あのコ、きらい。Ⅳ (ページ19)

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＃１９ページ19

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最後の一人である宮入志穂からの返信は来ないまま。

「末澤、なんか顔疲れてへん？」

「そんなことないやろ」

CRASHにだけ熱意を向けられればいいものの、

俺にだってグループがあって、仕事がある。

リチャにだけは疲労を見抜かれたけど、それ以上は何も聞かずにいてくれた。

「…また来たの？君」

「はい」

「暇！？暇なの？関西Jr！」

呆れ顔の秋野にも、執拗いと怒る本城にも時間の許す限り何度でも会いに行った。

それは時に大阪だったり、東京だったり、名古屋だったり。

『…何度お電話いただいても、返答は変わりませんよ』

「今日がダメでも明日なら、何か変わってるかもしれへんし」

電話をかけた先、海外滞在中の真野にまでため息をつかれる始末。

彼女のルームメイトは今や顔見知りで、勝手に乱入しては勝手に喋っていく。

それほどに、俺はしつこかった。

『…あなた、もしかして5年前くらいに1度事務所辞めようとしたことあります？』

数回目のテレビ電話で、真野が切り出したのは俺の話で。

関係ないと答えないことも出来たけど、彼女から話題を振ってくれるのは初めてで。

それをきっかけに少しでも打ち解けられたら、解決の糸口が見えるのではと思って正直に答えた。

5年前…2014年…確かにちょうどそのくらいの時期に辞めようとしてた。

『ああ…やっぱり。』

「やっぱり？」

訳が分からず眉間に皺を寄せた俺に、真野が5年前の真実を話してくれた。

『私たちが活動休止した後のことなんですけど、

志穂の病気のことも分かって、Aが1人で活動することだけが決まってた時。

知ってる関西Jrの子が"事務所を辞める"って言い出したってあの子言ってました。

その子は絶対辞めさせちゃいけないって、あの子必死になって関西Jrのスタッフに連絡とって。

来年のCRASHのツアーに帯同させるとか、まだセトリも公演数もはっきり決まってないのに言っちゃって、橘さんに怒られてました。』

ここまで言ったら、きっと心当たりあるんじゃないですか？と真野が笑う。

『Aは世間的に見たらただ関西に逃げただけなのかもしれないけど、

でも絶対、それだけじゃなかった。

だってそれだけなら、関西で嫌がらせされた時にきっと逃げ出してる。

逃げ出さなかったのは…』

"あなたがいたから"かもしれませんねと真野が言って、時間だからと通話が切れた。