あのコ、きらい。Ⅳ (ページ2)

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泣くな、泣いたら、…泣いたら志穂を信じてないことになっちゃう。

あの子は、大丈夫。

大丈夫、大丈夫、大丈夫。

「うわっ」

施設の隣、いつか閉じ込められた倉庫に向かう。

こんな顔じゃ帰れないから、1旦1人になって落ち着こう。

向かう途中、曲がり角で誰かにぶつかって、後ろに倒れた私。

ぶつかった相手はすぐ起き上がって、「ごめんなさい、大丈夫ですか？」と手を差し伸べてくれた。

その手を掴もうとした手が、情けなくガタガタと震えてて。

「大丈夫ですか！？あれ…Aさん？」

手を握ってくれた正門くんが、私だと気付いて「どうしました？」と心配そうに顔を覗き込んだ。

「やっ…ごめん、大丈夫だから、」

「…大丈夫やないでしょ、そんな泣いて…」

困ったように眉を曲げた正門くんに、優しく頭を撫でられて

ちょっと歩けますか？と言われ、支えられながら最初の目当てだった倉庫に連れて行かれて、椅子に座らせてもらった。

横には正門くんのギターがあって、自主練していたことは一目瞭然。

…そうだよ、この場所は正門くんのもの。

「ごめん、」

「大丈夫ですよ」

俺、見ないですからと正門くんが私を抱き締めた。

「冬なのに…」

「…冬なのに汗かいてんなこいつっていうのは、触れんといてください」

笑いながら、涙が止まらなくて。

みっともなく嗚咽を漏らしながら、ワーワー泣いた。

「志穂が、死んじゃうかもしれない…」

「え？志穂って…宮入さん、ですか？」

ちょっと落ち着きを取り戻したあと、横の椅子に座った正門くんが動揺していた。

…そりゃそうだよね。

「え、でも宮入さんって確かプログラミング勉強するために、お休みしてるんじゃ…」

「それ嘘です。ほんとは、3人の活動休止が発表されたあとすぐ病気が見つかってそれで、」

「…やから毎週東京行ってたんですね」

それずっと、Aさん一人で抱え込んでたんですか？と正門くんが静かに聞いた。

「誰にも、話せへんかった？」

「…話しちゃいけなかったから、それが…志穂の意思だったから」

だけど本当は、私も知らないことが多すぎて

何を話せばいいのか、分からなかっただけ。