第三十八話（7） ページ32
そう尋ねると、半助は「あ、いや、その」と何か言い辛そうに少しもごもごしてから、覚悟を決めたかのように一度ぐっと唇を結んでから口を開いた。
「利吉君は、鈴さんと…知り合いだったんだなぁって」
「鈴、ですか？」
まさか鈴の名がここで出るとは思わなかった。
思わずきょとんとしていると、伝蔵が「何だ利吉、鈴さんと知り合いなのか？」と尋ねてくる。
「ええ、友人です」
迂闊に鈴との仲について語れば、鈴が龍と同一人物であることを悟られてしまうかもしれない。ここは無難に『友人』と語るのがいいだろうと、利吉は何気なく言ってのける。
ここで『恋人』と言えたならいいのに、なんてことをふっと思い胸中で苦笑いしながら。
「友人ねえ。何だかお前にしては珍しいな」
「失礼ですね、私にだって友の一人や二人いますよ」
「そうかい」
伝蔵にそう言い返して、半助を見ればどことなく視線が定まっていないような、何かを考えるかのような表情。
珍しいと思った。
大抵のことは笑顔で受け流す半助が、明らかな戸惑いの色を浮かべているのは。
そういえば、先程廊下で鈴の姿を見つけて声を掛けた時も、一緒にいた半助は驚きと、微かな落ち込みのような暗い影を落としたように見えたことを利吉は思い出す。
同時に、もしかして、とある考えが思い浮かんだ。
「鈴がどうしたのですか？」
確認する必要があるかもしれない、利吉はそう思い、半助に向き直ると尋ねる。
半助はすぐにいつもの柔らかな笑みに戻っていた。
「少し驚いただけだよ。世間は狭いなぁって。それに、君が年頃の女性と親しげに話しているのも珍しかったし…」
年頃といっても鈴はもう20歳なのだが、若く見える彼女の見た目からすれば年頃という言葉も強ち間違いでもないのだろうか。
「私だって、男ですから」
わざと意地悪くそう言ってみせると半助は、はっとした顔をした後「そうだよね、あはは」と空笑いをしながら視線を床に落とした。
中身のない空っぽな笑い声と同じく目は笑っておらず、明らかな動揺が見て取れる。
加えて、困った時に出る頭を掻く癖も。
ああ、これはやはりそうだな。
男が女の話題でこんな態度を取るのは大抵、女に気がある時だと相場は決まっているものだ。
だが、今の半助は利吉に対する嫉妬や焦りよりも戸惑いの色の方が濃く見える。
もしかしたら、まだ彼は自覚していないのかもしれない、と利吉はそんな半助の顔色を見て考えを巡らせた。
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ししゃもん(プロフ) - 千里丸さん» コメありがとうございます！同じ好みの方がいて嬉しいです！引き続き頑張ります！今作品が終わったら別キャラの忍たま夢にも挑戦する予定でいました。加えてシチュのリクもありがとうございます。できうる限りご期待に添えるよう取り込みたいと思います！ (2019年4月1日 23時) (
レス) id: 2f089d0de5 (このIDを非表示/違反報告)
千里丸 - 二度コメ失礼します。希望としては、夢主と男装夢主が同一人物であることが土井先生より先に誰か(以下A)にばれてしまい、秘密を守ってもらうためAと話すことが多くなってしまい、土井先生が嫉妬…みたいな展開が見てみたいです。ご検討いただければ幸いです。 (2019年4月1日 9時) (レス) id: 1ee468ee2e (このIDを非表示/違反報告)
千里丸 - 忍たま夢小説では数少ない作りこまれた設定、大好物です。睡蓮さんの考えるお話の設定はすごく好みなので、この小説が終わったら、忍たまの別キャラでも書いてほしいです。ご検討いただければ幸いです。とりあえず今は、「花菖蒲と蓮華草」を頑張ってください！ (2019年4月1日 9時) (レス) id: 1ee468ee2e (このIDを非表示/違反報告)
睡蓮(プロフ) - たまさん» ありがとうございます！糖度低めのお話ですが、胸キュンしてもらえて嬉しいです！これからもよろしくお願いします！ (2019年2月21日 11時) (レス) id: 2f089d0de5 (このIDを非表示/違反報告)
たま - 土井先生の夢小説を求めて辿り着きました( 〃▽〃)これからも胸キュンストーリーを楽しみにしてます！ (2019年2月21日 0時) (レス) id: 01fbcb5691 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ししゃもん | 作成日時：2019年2月9日 13時
