第三十八話(6) ページ31
このやり取りもいったい何度目になることやら。そう思うが、伝蔵が家に帰ってくれない以上、自分は引くことができない。
結局いつも通り、帰る・帰らないの不毛な言い争いになり、その口論は白熱していく。
「手裏剣打つぞ!」
「打てるもんなら打ってください!」
「「ぐぬぬぬぬぬ…!」」
双方睨み合いになり、とうとう実力行使となりそうになった時。
「まぁまぁ、二人とも落ち着いて。お茶でもどうですか」
盆に湯のみを3つ乗せて、柔らかく微笑みながら半助が火花を散らす山田親子のいる間にずいっと入ってきた。
「ふん!」と大人げなく大袈裟にそっぽを向いて、伝蔵は盆から己の湯のみをのると、ずずっと茶をすする。
その様子を見て利吉は溜息をつくと、半助に礼を言って自分も客人用の湯のみを手に取り一口口に含んだ。
「二人とも相変わらずですねぇ」
軽く笑いながら、半助も盆を床に置くと二人に倣って茶をすする。
ふう、と三人のほっとした一息が重なって部屋に響いた。
「すみません、土井先生。いつもいつも」
「いや、仲が良くてよろしい」
にこり、と半助は柔和な笑みを浮かべる。
その笑みに利吉もつられ、先程まで吊り上がっていた父譲りの釣り目が下がるのを感じた。
この人はいつもこうだ。
いつも優しく微笑んで、場を和ませる。時には子どもたちを守る為、その優しい顔は厳しくもなるけれど、基本的に優しいそれはきっと彼の生来受け持った人柄だと思う。
まるで頃合いを見計らったかのように父との言い争いの間に現れたのも偶然ではないのだろう。
取り合えず、父に言うべきことは全て言った。後は時間の許す限り、ゆっくりしていこうと利吉は何気ない会話を伝蔵や半助と交わす。
最近の社会の動きから、忍たま達の事まで。
外からは子ども達が遊ぶ無邪気で楽しそうな声。食堂のおばちゃんが夕餉の準備を始めたのか、どこからか料理のいい匂いも漂ってくる。
平穏な時間。それにどれ程日頃の疲れを癒されることか。
「ああ、もうこんな時間か」
気が付けば、湯のみの茶がなくなり、徐々に日も傾き始めるだろう頃になっていた。
そろそろお暇しようと思っていると、半助がこちらを見て、何かを言いたそうにうずうずしているのが目に入った。
「土井先生、私に何か?」
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ししゃもん(プロフ) - 千里丸さん» コメありがとうございます!同じ好みの方がいて嬉しいです!引き続き頑張ります!今作品が終わったら別キャラの忍たま夢にも挑戦する予定でいました。加えてシチュのリクもありがとうございます。できうる限りご期待に添えるよう取り込みたいと思います! (2019年4月1日 23時) (レス) id: 2f089d0de5 (このIDを非表示/違反報告)
千里丸 - 二度コメ失礼します。希望としては、夢主と男装夢主が同一人物であることが土井先生より先に誰か(以下A)にばれてしまい、秘密を守ってもらうためAと話すことが多くなってしまい、土井先生が嫉妬…みたいな展開が見てみたいです。ご検討いただければ幸いです。 (2019年4月1日 9時) (レス) id: 1ee468ee2e (このIDを非表示/違反報告)
千里丸 - 忍たま夢小説では数少ない作りこまれた設定、大好物です。睡蓮さんの考えるお話の設定はすごく好みなので、この小説が終わったら、忍たまの別キャラでも書いてほしいです。ご検討いただければ幸いです。とりあえず今は、「花菖蒲と蓮華草」を頑張ってください! (2019年4月1日 9時) (レス) id: 1ee468ee2e (このIDを非表示/違反報告)
睡蓮(プロフ) - たまさん» ありがとうございます!糖度低めのお話ですが、胸キュンしてもらえて嬉しいです!これからもよろしくお願いします! (2019年2月21日 11時) (レス) id: 2f089d0de5 (このIDを非表示/違反報告)
たま - 土井先生の夢小説を求めて辿り着きました( 〃▽〃)これからも胸キュンストーリーを楽しみにしてます! (2019年2月21日 0時) (レス) id: 01fbcb5691 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ししゃもん | 作成日時:2019年2月9日 13時