第三十六話(3) ページ18
「そう言えば、俺、掃除の前に一度此処に様子を見にきましたぜ」
「えっ、お前いつの間に?」
「随分と美味しい話なんで、怪しいと思ってこっそり。なんか、パートのおばちゃんとかをこの建物に集めて何かやってましたよ。その時に、此処を出入りしてた奴らが、ええっと…『ツル』がどうとか言ってましたけど」
「『ツル』?」
その言葉に今度は半助が首を傾げた。『ツル』とは一体何の事だろうか。
「一体何を此処でやっていたんだ…?」
検討つかない言葉に1人言葉をこぼした時。
「おそらく、阿片の栽培または製造でしょう」
呟いた独り言に背後から返事が返ってくる。
振り返れば、念の為に敷地内の見回りに出ていた龍の姿があった。
「これが落ちていました」
白い掌の上に乗っていたのは、丸々とした緑色の果実。滲み出たかのように表面には乾燥した果汁がこびり付いており、何だか少し気味が悪い。
「これは?」
「ケシの実です。表面に傷をつけて採取される樹脂が阿片の材料になります」
果汁の表面にこびり付いた果汁を龍は指差す。
「その者が聞いた『ツル』はおそらく『津軽』ではないでしょうか。阿片の俗称です」
「阿片…なんだってそんな物が此処に?」
「それは分かりませんが…何も知らない一般人をここに呼んで、阿片の元となるケシの実の樹脂集めをしていた、そう考えるのが自然かもしれません」
「成る程ね…阿片は高価だからな。だが、それ程までのケシの実を手に入れることができるということは、雇い主はそれなりの人物ということになるな」
「ええ」と龍は半助の言葉に頷くと、すっと山賊の3人を見た。
それにつられて半助も山賊達を見て、そうだ、と口を開く。
「掃除の依頼主については、何か知らないか?」
「知らねぇなぁ」
「お前、一度見にきたことあるんだろ。なんか知らねぇか?」
親方らしき人物が先程の子分をつつけば、子分はうーんと頭を捻り「そう言えば…」と何かを思い出したかのように、目線を上にやりながら話し出す。
「何か、こう…こういう感じの印を何かで見たような、見なかったような」
そう言いながら、子分は落ちていた小枝で地面に印を書き始めた。
半助と龍、加えて子ども達も何だ何だと一緒に描かれた印を覗き込んで、「あっ!」と声を上げる。
「これって、スッポンタケ城の…!」
乱太郎のその言葉に賛同するかのように半助と龍は目を合わせると、重々しくこくりと頷いたのだった。
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ししゃもん(プロフ) - 千里丸さん» コメありがとうございます!同じ好みの方がいて嬉しいです!引き続き頑張ります!今作品が終わったら別キャラの忍たま夢にも挑戦する予定でいました。加えてシチュのリクもありがとうございます。できうる限りご期待に添えるよう取り込みたいと思います! (2019年4月1日 23時) (レス) id: 2f089d0de5 (このIDを非表示/違反報告)
千里丸 - 二度コメ失礼します。希望としては、夢主と男装夢主が同一人物であることが土井先生より先に誰か(以下A)にばれてしまい、秘密を守ってもらうためAと話すことが多くなってしまい、土井先生が嫉妬…みたいな展開が見てみたいです。ご検討いただければ幸いです。 (2019年4月1日 9時) (レス) id: 1ee468ee2e (このIDを非表示/違反報告)
千里丸 - 忍たま夢小説では数少ない作りこまれた設定、大好物です。睡蓮さんの考えるお話の設定はすごく好みなので、この小説が終わったら、忍たまの別キャラでも書いてほしいです。ご検討いただければ幸いです。とりあえず今は、「花菖蒲と蓮華草」を頑張ってください! (2019年4月1日 9時) (レス) id: 1ee468ee2e (このIDを非表示/違反報告)
睡蓮(プロフ) - たまさん» ありがとうございます!糖度低めのお話ですが、胸キュンしてもらえて嬉しいです!これからもよろしくお願いします! (2019年2月21日 11時) (レス) id: 2f089d0de5 (このIDを非表示/違反報告)
たま - 土井先生の夢小説を求めて辿り着きました( 〃▽〃)これからも胸キュンストーリーを楽しみにしてます! (2019年2月21日 0時) (レス) id: 01fbcb5691 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ししゃもん | 作成日時:2019年2月9日 13時