第三十一話(1)※アニメ第16期46話参照 ページ1
「きり丸、遅いですね」
夕餉のいい香りが立ち込め始めた頃、龍は作り終えた雑炊の入った鍋の蓋を閉めると薄暗くなり始めた室内を見回し、そう言った。
「そうだな、今日はそんなに遠くまで行くとは言っていなかったが…」
半助もその言葉に顔を上げ、物音のしない玄関の向こうを見つめた。
普段なら、腹が減ったと言いながらきり丸が帰ってくる時刻だというのに、一向に帰ってくる気配がない。
「見てきましょうか」
辻斬りの件もある。
龍がそう言って動き出すと、半助も腰を上げた。
それを見て、「私が行きますよ」と龍は半助に声をかける。
ここは半助ときり丸の家だ。
もしきり丸が帰ってきた時、きっと彼が出迎えてほしいのは龍ではなく半助だろう。
「土井先生は待っていてあげてください」
その言葉に半助も龍が何を言わんとしているのか察したのか、「そうか」と頷くとあげた腰を下ろした。
「よろしく頼むよ、龍君」
「はい」
半助の言葉に頷いて、龍は外に出た。
※
今日は昨日終わった筆の納品と氷菓子の売り子だと朝にきり丸が話していたのを思い出しながら、龍は氷菓子店へと向かうも、やはりそこにはきり丸の姿はなく。
半助宅からここまでの道程でも出くわす事はなかったことから、龍はやや茂みの多い迂回路を歩き進めた。
ふと先日河川敷で見た辻斬りの光景が脳裏を過る。
いや、まさかな、と嫌な考えを振り払い、道を進む。
日が沈む前にきり丸を見つけ出したい。
土井宅まで残り半分くらいといった所だろうか、そこまで進むといくらか先に微かな人影が見えた。
だが、その大きさは子どものものではない。
一瞬でも期待してしまったその事に軽く溜息を吐いた時だった。
「ぜぇったいに、嫌だねっっ!」
明らかに大人のものとは違う、子どもの声。
ここ数日で聞き慣れたきり丸の声が、人影の向こうから聞こえた。
龍は顔を上げて遠い人影の方を凝視する。
よく見れば1人に見えたその人影は重なり合っており、正しくは2、3人の男がそこにいるようだった。
「誰がお前らなんかにくれてやるもんか!これは俺の銭だ!」
きり丸の怒鳴り声から察するに、どうやら男数人にアルバイトの稼ぎを寄越せと囲まれているらしい。
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ししゃもん(プロフ) - 千里丸さん» コメありがとうございます!同じ好みの方がいて嬉しいです!引き続き頑張ります!今作品が終わったら別キャラの忍たま夢にも挑戦する予定でいました。加えてシチュのリクもありがとうございます。できうる限りご期待に添えるよう取り込みたいと思います! (2019年4月1日 23時) (レス) id: 2f089d0de5 (このIDを非表示/違反報告)
千里丸 - 二度コメ失礼します。希望としては、夢主と男装夢主が同一人物であることが土井先生より先に誰か(以下A)にばれてしまい、秘密を守ってもらうためAと話すことが多くなってしまい、土井先生が嫉妬…みたいな展開が見てみたいです。ご検討いただければ幸いです。 (2019年4月1日 9時) (レス) id: 1ee468ee2e (このIDを非表示/違反報告)
千里丸 - 忍たま夢小説では数少ない作りこまれた設定、大好物です。睡蓮さんの考えるお話の設定はすごく好みなので、この小説が終わったら、忍たまの別キャラでも書いてほしいです。ご検討いただければ幸いです。とりあえず今は、「花菖蒲と蓮華草」を頑張ってください! (2019年4月1日 9時) (レス) id: 1ee468ee2e (このIDを非表示/違反報告)
睡蓮(プロフ) - たまさん» ありがとうございます!糖度低めのお話ですが、胸キュンしてもらえて嬉しいです!これからもよろしくお願いします! (2019年2月21日 11時) (レス) id: 2f089d0de5 (このIDを非表示/違反報告)
たま - 土井先生の夢小説を求めて辿り着きました( 〃▽〃)これからも胸キュンストーリーを楽しみにしてます! (2019年2月21日 0時) (レス) id: 01fbcb5691 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ししゃもん | 作成日時:2019年2月9日 13時