完結【忍たま・土井夢】花菖蒲と蓮華草 2 (ページ49)

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第二十話（4）ページ49

顔を隠すかのように俯いた彼女の唇が震える。
まるで泣いているかのように。
一層の事、涙を流してしまえば楽になれるのかもしれない。だけど、彼女はそれをしようとしない。

その姿がいつぞやのきり丸、そして半助自身と重なった。
孤独に震え、耐え忍ぼうと、泣くに泣けぬ、あの時と。

抱きしめてやるべきなのだろう、いつかの自分がきり丸にしたように、いつか自分がそれを求めたように。

けれど、きり丸や半助と鈴は決定的な違いがあった。
彼女は人の温もりを知らない、怖れている。
人の温もりを知らず、孤独それだけじゃない何かを抱え震える鈴が纏う空気は自身への他者の侵入を拒否しているのを伝えてくる。
きっと無理に彼女に干渉しようものなら、思いもしない形で彼女を傷つけるかもしれない。

だから、せめて。
両手でそっと彼女の手を握る。
せめて知っていてほしい。

『…鈴さん、大丈夫。何も怖くないですから』

この温もりが怖くなどないことを。
貴女の味方であることを。

ふと龍の方を見ると、ぱちりと目が合った。
わぁわぁと子ども達に囲まれて、無言のまま目で助けを求めている。
半助はつい、小さく笑ってしまう。

どこか、似てると思ったのは何故だろう。
無愛想な所や、人を寄せ付けない雰囲気も確かにそうだけれど、そのような探せば他にも似ている人が見つかるだろう所ではなくて。

刀を構えた時に殺気と共に見えた、哀しみ。
得体の知れない暗闇が、あの晩の彼女のものと似ていたからだろうか。

「そろそろ龍君を助けてやってはどうですかな」

いつの間にか隣に立っていた山田に言われ、半助ははっとすると、そうですね、と頷き考えるのを止める。

これ以上考えたところで何か結論が出る訳ではないのだから。

→『花菖蒲と蓮華草 3』へ続く。