完結【忍たま・土井夢】花菖蒲と蓮華草 2 (ページ43)

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第十九話（2）ページ43

とりあえず、ひらりと龍は牧ノ介の木刀を躱す。
牧ノ介は「まだまだぁ！」と先程と何ら変わらない突撃を再度行い、龍もそれを再度ひらりと躱す。
それが繰り返された。

このまま牧ノ介が勝手に体力消耗して勝負どころじゃなくなってしまえばいいのだけれど。

そう思っていると、「龍さん！」と観客席にいる乱太郎の声が聞こえた。

「龍さん！牧ノ介のことなんか気にしないでぼこぼこにしちゃってください！」

「そうですよ、その方が今後の為です！」

しんべヱまで加わって、なんと酷い言い様。

「そうっすよ！それに皆さんお金払って見てるんですから！あひゃあひゃ」

きり丸は目を小銭にしている。
しかし、まぁ確かにきり丸の言っていることもごもっとも。

ひらりひらりと、突撃してくる牧ノ介を躱しながら、龍は暫し考え、仕方がない、と小さく息を吐いて静かに木刀を構え直した。

「むむっ、やっとやる気になったか」

さすがに牧ノ介もそれには気付いたらしく、にたぁといやらしい笑みを浮かべる。
そして、「とりゃあああ！」と今日一番の声を上げて木刀を振りかざして向かってきた、が、変わったのは声量だけでやはり向かってく姿はチャンバラ。

またもやひらりと躱して、今度は踏み込む。
ひゅんっと空を切った音がしたと思うと、振り返った牧ノ介の目の前には龍の木刀の切っ尖が突きつけられていた。

「ひぇっ」

「…これで、いいか？」

へな、と腰を抜かす牧ノ介を見下ろす龍は相変わらず無表情のままで首を傾げる。
あっという間の出来事に一瞬だけ、しん、と皆が静まった。

「うむ！あっぱれ！龍君の勝ちじゃあ！」

そんな静まり返った空気を学園長の楽し気な声が破り、わあっと歓声が湧いた。