第十九話(1)※アニメ第2期97話参照 ページ42
面倒なことになった。
牧ノ介と対峙しながら龍は思う。
気付けば周りには沢山の人集り。きり丸の商売が上手いのか、忍術学園には暇人が多いのか、あるいはその両方か。
2人だけというのなら、まだ適当にあしらって事を有耶無耶にしてしまうことも出来たかもしれないが、こうも人が集まってしまったら、牧ノ介のいう決闘とやらをしなくてはならないではないか、と。
龍は面倒臭そうに溜息を吐いた。
「お前!何をそんなやる気なさそうにしている!この天下の剣豪、花房牧ノ介を馬鹿にしているのか!?」
そのつもりはないけれど、しかし、自称とはいえ天下の剣豪と名乗っているし、それなりの腕はあるのだろうか。
今度は龍が牧ノ介を上から下まで見る。
背は小柄ではあるが、体格は悪くない。太っているだけだと言ってしまえばそれまでだけれど。
それに自信は満々な様子だ。
「さぁ、何処からでもかかってこい!」
学園長より、両者木刀での勝負との指示が出されており、牧ノ介は手に握った木刀を構える。
確かに『何処からでも』だな。
その言葉のままの構え。
とりあえず、牧ノ介に合わせて木刀を構えるものの、さて、どうしようかと悩む。
素直に勝負すればいいのだろうか?
忍術学園の牧ノ介の立ち位置が分からない。
もし、剣術の師範とかだったとしたら、打ち負かすのは頂けないだろうし、むしろ師範の刀の打ち合いを子ども達に見せてやるべきなのかもしれない。
そうなると、簡単にわざと負けてやる訳にもいかなくなる。
まぁ、牧ノ介を見た時の乱太郎、きり丸、しんべヱの反応から、牧ノ介が忍術学園の剣術の師範という可能性は低いようにも思われるが、しかし零ではない。
さらに、牧ノ介には話したが、龍は剣客などではない。
きちんと道場に入って剣術を学んだ訳でもなく、完全なる独学だ。
そんな出鱈目な闘い方を子ども達の前で見せるのも好ましくないとも思えた。
中々動き出さない龍に牧ノ介は痺れを切らしたのだろう。「えぇい!そっちがこないのなら、私からいってやる!」と、木刀を振りかざして突撃してくる牧ノ介。
その動きはどう見ても、チャンバラをする子ども。
…忍術学園の師範、ではないな、これは。
護衛の際に見た、二年生の剣捌きの方がまだ良いように思える。
92人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ししゃもん | 作成日時:2018年10月30日 10時