第十八話（3） ページ40
「何をごちゃごちゃ言っている！おい、お前！よくもさっきはこの天下の剣豪、花房牧ノ介に足を引っ掛けてくれたな！」
ずんぐりむっくりした身体をのけらせて、偉そうに牧ノ介はそう言い、上から下までじろっと龍のことを見て、にやり、と嫌な笑みを浮かべる。
それは3人も感じたようで、きり丸が小さく「嫌な予感」と呟いたのが聞こえた。
「お前も刀を使うのか、剣客か」
「…刀は使うが、剣客という訳では「やかましい！」」
話を途中で遮られ、少しだけ龍は不愉快そうに顔を顰めた。しかし、牧ノ介はそんな事どこ吹く風。
「刀を腰に差している、イコール剣客！貴様、私と勝負しろ！」
「嫌だ」
龍にしては珍しく、即答した。
後ろで3人が「おお、龍さんが即答した」と声を揃えて呟いたのが分かった。
意味のない勝負など必要性の欠片も感じられなければ、彼と勝負する理由もない。
加えて自分は剣客ではない。
ややこしい事になる前にこの場を去ってしまおうとすると、脚を掴まれた。
「おい、離せ」
見れば、牧ノ介ががしりと自分の脚にしがみついている。
「離せと言っている」
「嫌だ！私と勝負しろ、勝負ー！」
子どものようにいやいやと首を振ってしがみつく牧ノ介に思わず龍も戸惑ってしまう。
こんな大人、いや、人間見たことない。
「断る。それに私は今、学園長に雇われている身だ、学園長の許可なくてはそのようなことはできない」
理由があれば諦めるだろうとそう言ったのだが、それは裏目に出た。
「学園長の許可があればいいんだな？」
にやり、と牧ノ介が企みを帯びた嫌な笑みを浮かべた。
※
部屋の外が騒がしい。
何事だろうと襖を開けると、通り縋りの生徒の話し声が聞こえた。
「今から、護衛役の龍さんと花房牧ノ介が対決するらしいぞ」
半助が、驚いて室内を振り向けば、これまた驚いた顔をした山田と目があい、2人は部屋を出た。
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作者名：ししゃもん | 作成日時：2018年10月30日 10時
