第十一話(4) ページ4
「具合はどうだい?」
「お陰様で」
談話し始める2人を見ながら、鈴は薬棚に向かう。
手際よく数種類の薬草を取り出し、すり潰して湯に溶かした。
「はい、これ飲んでください」
「う…これ、苦いやつですよね」
「そうです」
ぐっと差し出された湯飲みに清八の顔が嫌そうに引き攣る。
だが、鈴は構わずに「どうぞ」と湯呑みを差し出すのを止めようとはしない。
「我慢して飲んでください、早く怪我直したいでしょう」
「それはそうですけど…」
「だったら飲む」
ううう、と唸る清八と無表情のまま、さぁさぁと湯呑みを差し出す鈴。
何だかそのやりとりがまるで仲の良い夫婦かのように見えて、半助はムッとしてしまう。
そして、どうしてムッとしたのか分からず、いやいやと気持ちを振り払うように首を軽く横に振った。
「良薬は口に苦し、ですよ。清八さん」
半助のその言葉に清八は湯呑みを渋々と受け取ると、鈴は「少し外しますね」と言って部屋を出て行った。
どうしてか、その事に半助はどこかほっとする。
何故だかは分からないけれど、鈴と清八が仲良くしているのを見ていると、胸に靄がかかるような、妙に落ち着かない気分になってしまう。
一方清八は、湯呑みを渋々受け取ったものの、中の液体を難しい顔をして睨んでいた。そして、先程の半助の言葉に「そうですよね…」と呟き、大きな溜息をつくと湯飲みの中を一気に飲み干した。
「しかし、元気そうでよかった」
「いやぁ、ご心配をおかけしました」
そう言って笑う清八の顔色は大分良い。
ここに運ばれてきたあの時とは大違いで、半助も安堵の息を吐いた。
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作者名:ししゃもん | 作成日時:2018年10月30日 10時