第十一話(2) ページ2
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人参とさつま揚げ。おばちゃんにバレないようこっそりおかずを交換して、2人は食事を始める。
昼休みが過ぎた、この時間は生徒達はおらず、昼休みのような喧騒さはない。
食事の時間をずらした教職員がちらほらと見えるくらいだ。
先生達もたまには静かに食事したいのだろう。
半助もその1人ではあるが、最近は他にも理由ができた。
清八が来てからは、清八の食器を下げに昼休み後に鈴が食堂に来る。
前の一件や約束もあり、何となく一緒にお昼を取っていたものだから、最近は鈴に合わせるかのように午後の授業がない日は昼休み後に半助も食堂に来るようになっていた。
鈴もその事に気付いているのかいないのか、それは分からないが、不快には思っていないらしく、先程のように半助を探すこともある。
「清八さん、どうですか?」
交換した人参を飲み込んで、半助は目の前で食事を取る鈴に尋ねる。
彼女は変わらず口数は少ないが、話しかければ以前より話してくれるようになった、と思う。思いたい。
「怪我の回復は順調です、もう少ししたら歩くくらいはできるかと」
「そうですか、本当、鈴さんのお陰ですね」
あの日、鬼気迫る勢いで治療に当たっていた鈴を思い出す。普段は何事にも無関心かのように飄々としている彼女が初めて見せた必死な姿。
甲斐あって、清八は一命を取り留め、しかも順調に回復しているとは、何とも素晴らしいことだ。
「保健室の仕事の他に清八さんの事まで任せてしまって。それに団蔵もしょっちゅう保健室に顔を出しているようで、すみません」
団蔵もすっかり清八の命の恩人の鈴を気に入ったらしく、うきうきと保健室に通っている。清八の命の恩人、理由はそれだけではないのだろうけども。
鈴は「いいえ、大丈夫です」と返す。加えて「それに」と続ける。
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作者名:ししゃもん | 作成日時:2018年10月30日 10時