17-5 : 逃亡者の夜�� ページ31
大先生side
「Aちゃん」
「なに？」
「どうしたん、手ずっと握って」
「…不安だから」
「そんなことせんでも、俺はどこにも行かへんよ」
「わかった、離して欲しいなら離す」
するりとほどかれる手の温もり
正直、もう少し繋いでいたかってんけどな
「Aちゃん、寒いならもっとよってええよ」
「それがいいと思うならそうする」
「…Aちゃんは寒くないん？」
「寒い、から大先生の側いにる」
明らかに…様子がおかしい
確かに、Aちゃんが城にいこうとしたのを止めたのは俺やし…この場でAちゃんを傷つける可能性があるのは俺…やけど
「そろそろ目的地や、外にでたら警戒しろな？敵がおるかもしれへん、まだフランツ領やから」
「うん。ちゃんと言うこと守るよ」
「…」
「…」
見てくれる、ちゃんと話してくれるのに
どこか違う。違和感がある
暗くて表情が見えない
ピチャッ…ピチャッ…
冷たい水が天井から滴り頬を濡らす
やっと出口が見えた…外や…
そう思って扉に手を掛け扉をあけた
月明かりが差し込む
同時に、腕を引かれた
「A…ちゃん？」
「ねぇ大先生…好き…」
「は？」
「好き、本当だよ。好きなの」
自分が欲しくて欲しくてたまらなかった言葉
彼女からの言葉…
それなのに
心臓が高鳴り、冷や汗が伝う
手足が震える…怖い…怖い怖い怖い
「ねぇ大先生…好きだよ…だから、私のことは見捨てないでね」
彼女の表情は月の明かりのお陰で
鮮明に見えた…だからこそ
「Aちゃん…どうしたんや」
目に光の無い虚ろそのものの彼女が
「何で？だって、大先生は私のこと好きって言ってくれたから」
人形のように繰り返す姿が
「ほんまに…それ、本心か？」
怖くて
「うん、私…一人じゃ何も出来ないの。だから私のことが好きな大先生なら…助けてくれるかなって…ダメ…かなぁ？」
違う…
「ダメ…や、無いけどな？ほら、ちゃうやん」
君はそんな…媚びるような笑い方なんてしない
「…嘘…なの？大先生、私のこと嫌い？」
それでも
「そんなことないで！俺はAちゃんのこと大好きや、な？だから、そないに怯えんでええんやで」
君のことは欲しかった
「うん、ありがとう大先生！大好き」
「頑張って逃げよう？帰ったら報告せなアカンな」
彼女は壊れた
告白は偽りない彼女の壊れた心そのもの
いつかこの嘘は、消えて無くなるとしても
今だけ君を俺の物にしていたい
だから
彼女を強く抱き締めた、キスはまだしない
17-6 : 無力なこの腕を→←17-4 : 殺戮者の夜��
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夜空音 - MAGAさん» コメントありがとうございます！いえいえ、そんなに誉めてもらえるほどの物ではないですよ…けれど、そうやって応援してもらえると頑張ろうと思えます。今後ともよろしくお願いいたします (2017年4月9日 1時) (
レス) id: d75dbfea0a (このIDを非表示/違反報告)
MAGA(プロフ) - 貴方様の小説…とても好きです。雰囲気、内容、設定。そして表現の仕方…どれもが素敵です。今までコメントを送る勇気が無かったのですが、かなり前から見させていただいてました。これからも続き楽しみにしています。頑張ってください(^^) (2017年4月7日 0時) (レス) id: 3a4970e686 (このIDを非表示/違反報告)
夜空音 - 5‐8さん» ありがとうございます！！魅力的だと言って貰えてとても嬉しいです…！一気に読んで疲れるような文章になっていたら申し訳ないです(・・;)まだまだこの話は続きますので、今後も楽しく読んでもらえるように頑張ります！応援ありがとうございます (2017年3月26日 22時) (レス) id: bfc721df53 (このIDを非表示/違反報告)
5‐8(プロフ) - とても面白く一気に読んでしまいました…それぞれの心情と行動全てが魅力的で、とても素晴らし小説に出会え感動しております…これからも応援しております！更新頑張って下さい！ (2017年3月25日 5時) (レス) id: a6f76012a7 (このIDを非表示/違反報告)
夜空音 - 美桜さん» コメントありがとうございます。以下に人間性、現実、理想、そして個人の心をいかせるか頑張って書いているのでなかなか完結しませんが、 これからもよろしくお願いいたします (2017年3月20日 22時) (レス) id: bfc721df53 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夜空音 | 作成日時：2017年2月19日 9時
