17-3 : 逃亡者の夜�� ページ29
Aside
大先生に腕を引かれ歩く
一向に歩き出さない私を心配したのか
何度も何度も彼は話しかけてくれた
城で…城で何か起こったんだ
私は悲鳴が聞こえてからずっと考えていた
ドクン…ドクンと心臓が血液を送り出し身体中が熱く強ばる
「妹様…逃げて…」
「Aちゃん、いま逃げるのはあんたや」
「でも…大先生…このままだと妹様が…」
「…大方、シベリルの暗殺部隊でも城に来たんやろ。つまり、もうフランツに生きる望みはあらへん。逃げないとだめや」
「でも…」
「世の中はそんなに甘くない。Aちゃんはようわかっとるはずや」
目の前で人が死ぬ恐怖…えたいの知れない侵入者の影…それは子供の頃の私が経験したトラウマ
それを…妹様も…
いてもたってもいられなかった
私と同じ経験をしていいわけがない
幼い少女にトラウマを背負わせるなんて愚か者の考えを許せない…絶対に許さない
「Aちゃ…」
「大先生、一人で逃げて」
「は？」
「私…嫌なの…いつもならきっと正しく逃げる選択が出来たのに…でも…今は…」
ボロボロと大粒の涙が溢れる
母が死んだ、目の前で殺された
あのときの私は…妹様と丁度同じくらいの少女
どうしても姿が重なる彼女にトラウマなんて作ってはいけない…愛情に飢えた…獣のような人間なんて私一人で十分だから
「見過ごせないの」
「Aちゃんっ！！」
歩いた道を走り出す
後ろから大先生が追いかけてくる音がした
それを振り切るように走って走って走って
ようやく城への扉がみえた
漏れだす光に手を伸ばした
けれど。届かなかった
「捕まえたでAちゃん」
「離して大先生っ！！！」
「静かに！」
「嫌っ！！離してってば！！このままだと妹様が…」
同じは嫌だ、同じはダメだ！私と一緒なんて苦しくて辛いだけだ
「…なら、行ってもええよ」
「ひゃっ！？」
暴れていると大先生が拘束を解いた
そのせいかバランスを崩して転んでしまう
追い討ちをするように、床にしゃがみこむ私を見下すようにして言葉を放つ
「行って…Aちゃんに何ができるん？」
心に冷たい風が吹き抜けた
そうだよ…私一人に何ができるの
気づいたら私は立ち上がって大先生の腕にしがみついていた
大先生は満足そうに…苦しそうに笑いながら
「ええ子やね…ごめんな…」
私を誉めてくれた
一人だと無力で何も出来ない私のことを…
言うことを聞いたら誉めてくれた
「大先生…帰ろ？」
「うん、帰ろうな？」
優しく撫でてくれた
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夜空音 - MAGAさん» コメントありがとうございます！いえいえ、そんなに誉めてもらえるほどの物ではないですよ…けれど、そうやって応援してもらえると頑張ろうと思えます。今後ともよろしくお願いいたします (2017年4月9日 1時) (
レス) id: d75dbfea0a (このIDを非表示/違反報告)
MAGA(プロフ) - 貴方様の小説…とても好きです。雰囲気、内容、設定。そして表現の仕方…どれもが素敵です。今までコメントを送る勇気が無かったのですが、かなり前から見させていただいてました。これからも続き楽しみにしています。頑張ってください(^^) (2017年4月7日 0時) (レス) id: 3a4970e686 (このIDを非表示/違反報告)
夜空音 - 5‐8さん» ありがとうございます！！魅力的だと言って貰えてとても嬉しいです…！一気に読んで疲れるような文章になっていたら申し訳ないです(・・;)まだまだこの話は続きますので、今後も楽しく読んでもらえるように頑張ります！応援ありがとうございます (2017年3月26日 22時) (レス) id: bfc721df53 (このIDを非表示/違反報告)
5‐8(プロフ) - とても面白く一気に読んでしまいました…それぞれの心情と行動全てが魅力的で、とても素晴らし小説に出会え感動しております…これからも応援しております！更新頑張って下さい！ (2017年3月25日 5時) (レス) id: a6f76012a7 (このIDを非表示/違反報告)
夜空音 - 美桜さん» コメントありがとうございます。以下に人間性、現実、理想、そして個人の心をいかせるか頑張って書いているのでなかなか完結しませんが、 これからもよろしくお願いいたします (2017年3月20日 22時) (レス) id: bfc721df53 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夜空音 | 作成日時：2017年2月19日 9時
