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「確かに、シャンプーの匂いっていうより、
乾の匂いって感じ。」
「乾の匂いってなんすか。体臭的な？」
「シャンプーも、香水も、柔軟剤も、体臭も混ざって乾の匂い。」
「え、何かくさそうだなー。」
「ここで、良い匂いって言ったら、気持ち悪って思われそうだけど、
案外、良い匂いだよ。」
「へー、そうなんすね。自分の匂いってわかんなくないっすか？」
再び、自分の身辺をくんくん嗅ぎ出すAさん。
「んー、確かに自分の匂いってわかんないね。」
話が途切れそうだったので、仕事に戻ろうかと、
キーボードに再び手を伸ばした。
「ごめんね、仕事の邪魔して。」
「俺は、全然いいっすけど、
Aさんも何か用事してたんじゃないですか？」
「というか、乾、鼻いいよね。
さっきまで、福良さんと伊沢と
こんな風に隣で話してたのに２人全然気づかなかったよ。」
「さすがに、気付いてはいると思いますけどね。
言うか、言わないかの差じゃないですか？」
２人との話し中にここに寄り道しているということが分かって、
早く戻った方がいいのでは、という心配が膨らんでくる。
「でも、そういうのさりげなく言うのって
いい男のポイントだなーって…」
「それより、福良さんと伊沢さん大丈夫ですか？」
「ん？」
「話の途中で来たんじゃないですか？」
「そうだった。まあでも大丈夫でしょ。
実質私居なくてもいい話だったし。」
「いやー、大事だからAさん入れて
話してたんだと思うけど…」
「大丈夫、だいじ…」
Aさんの声は遠くからの声によって止まった。
「A、どこいった？
会議中なんだけど。」
「おい！A、お前さぼんな。
俺らだって忙しいんだよ。」
ばれたか、という顔をしているAさん。
「すいませーん、乾と次の案件のことで
話し込んじゃって。」
おいおい、俺のことを巻き込むなと思いつつ、
ふわふわと甘い匂いを残して
２人の方へ小走りで向かうAさんを見送った。
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作者名：琥珀 | 作成日時：2024年2月5日 2時
