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そういうと真っすぐに俺の目を見るA。


「全部メモして、全部やってやろうと思ってます。
 遅いなりの意地というか、
 ちょっと先に入社した者の意地というか。」


俺の取り越し苦労だったことがわかって、
安堵の笑みがこぼれた。


「Aって、そんな感じやったっけ?」
「私、昔から負けず嫌いですけど。
 あ、注文決まりました?」


タブレットを操作して、注文を済ませる。



「まあ、効率悪いとか言われたら
 さすがにちょっと傷つきますけど。」
「いや、俺も一瞬聞き間違いかと思った。」
「でも、私も大人なんで。さらっと流してます。
 気にしても仕方ないですし。
 え?でも、須貝さんがそんな話するってことは
 私、オフィスで顔に出てましたか?」



頬を両手で挟むA。



「いや、それは大丈夫。
 逆に俺の方が『は?』って顔してたと思うわ。」
「あはは、何で須貝さんが怒るんですか。」
「あんな嫌な言い方する奴、あんま居らんし。
 入社も先、年齢も上の人に対する言葉ではない。
 まあ後輩に対してもあんな言い方はないわ。」
「須貝さん、厳しい。」
「Aが緩すぎ。ちょっとは言い返しとかんと。」
「空気悪くなるのも嫌ですし。
 でも、乾くんにも同じような事言われたなあ…」



そんなやりとりをしていると、料理が運ばれてきて、
その話題が途切れた。


「「いただきます。」」


2人共しばらくは、黙々と食べ進める。

半分ほど、食べ進めたところで、
Aがいきなり箸を止めた。


「須貝さん、ありがとうございます。」
「ん?何?急に。」


「いや、さっき話してて、
 やっと自分の気持ちが分かったというか。」
「どういうこと?」
「最近、どう?って聞かれても、大丈夫ですって
 答えてたんですけど、
 やっぱ嫌だし、あんま大丈夫じゃないのかもって思えてきました。
 寝つきが良くないのはこれのせいか!って。」


人差し指を立てて、ひらめいたぞと言わんばかりに
笑顔でそう言うA。


「笑顔で言うことちゃうけどな。
 まあ、助けになったんならよかった。」
「ありがとうございます。」
「嫌なこと言われたら、他の奴にでも相談したら、
 みんな助けてくれると思うし。ふくらさんとかさ。」


ふくらの名前を出しといて、自分で少し悲しくなったが、
今はそんなことどうでもよくて、
昔より少し強く、でも脆くなった気がするAが、
心配でならなくなった。

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作品ジャンル:恋愛
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琥珀(プロフ) - ユメさん» このシリーズ初めてのコメントがユメさんで、最後もコメントくださって本当に嬉しいです!何とか2人を幸せのスタートラインに立たせれました!そうなんです!首を触る癖めちゃくちゃいいんですよね〜最後まで読んでくださって本当にありがとうございました! (12月16日 21時) (レス) id: 5ab7100f31 (このIDを非表示/違反報告)
ユメ(プロフ) - fkrさんの首に手を当てて話すクセ、魅力的ですよね(完結おめでとうございます! 最後までてえてえたっぷりで大満足です!) (12月16日 16時) (レス) @page42 id: 8ed95612e3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:琥珀 | 作成日時:2023年9月17日 23時

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