１６ ページ16
「電車、間に合いますか？」
「大丈夫、大丈夫。
まだちょっと余裕あるよ。」
沈黙が流れる。
お酒も少し入って、心臓の鼓動が速いのが分かる。
Aさんはあまり気持ちを前に出すような人ではないけど
前回のデートから好感触なことが自分にも伝わってきているし
このまま、自分の気持ちを伝えてみようか。
でもお酒が入った勢いで言っていいものか。
そんな考えが頭をぐるぐる回っている。
「じゃあ、ここで。」
彼女の声で、ふと我に返るともうマンションの前。
「あ、そうだね。じゃあ、また。」
何かを切り出すタイミングを失ってしまって、
素直にAさんを見送るために手を振ろうとした時、
彼女が突然話を切り出した。
「あの、ふくらさん。」
「え？あ、どうしたの？」
「すごく失礼な質問かもしれないんですけど、
ふくらさんは、こういう…
デートとかふたりで夜ご飯とか
他の女性とも行かれたりするんですか？」
彼女はいつも視線を逸らしながら話すが
今日は少し俯きながらもこちらから目線を外さない。
どうして彼女がこの質問をしたのかは
わからないけど、
ここではっきりさせるのが1番いいように思えてくる。
「こんなとこで立ち話するような
話じゃないかもしれないけど」
そう前置きして、自分の気持ちを伝えることを決める。
「他の人とデートとかしないし、
夜ご飯もふたりで行ったりしない。
俺、Aさんのことずっと気になってて、
もっと2人で話したりご飯食べたり
一緒に過ごしたいって思って。
好き…なんだと思う。Aさんのこと。」
言った後に、
何とも歯切れの悪い言い方になってしまったことが
悔やまれるがもう時は戻せない。
彼女は、まだ目線を逸らさないまま
こちらを見ているが口を開く様子はない。
きっと何と返したらいいかわからないのだと思う。
「ゆっくりでいいからさ、
またAさんの気持ち
聞かせてもらえたら嬉しいなって。」
「あ、はい。
こんな時なんて返したらいいのかわからなくて。
すみません。」
申し訳なさそうに少し頭を下げる彼女。
「そんな、謝らないで。
俺も突然言っちゃって驚かせたよね。」
ふと腕時計の文字盤が目に入って
終電の時間がそろそろ近づいている事に気づく。
「言い逃げみたいになっちゃうけど、
終電だから、そろそろ行くね。」
「あ、はい。お気をつけて。」
手を振って、小走りで駅の方へ駆け出した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 176人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
琥珀(プロフ) - ユメさん» このシリーズ初めてのコメントがユメさんで、最後もコメントくださって本当に嬉しいです！何とか2人を幸せのスタートラインに立たせれました！そうなんです！首を触る癖めちゃくちゃいいんですよね〜最後まで読んでくださって本当にありがとうございました！ (12月16日 21時) (
レス) id: 5ab7100f31 (このIDを非表示/違反報告)
ユメ(プロフ) - fkrさんの首に手を当てて話すクセ、魅力的ですよね(完結おめでとうございます！ 最後までてえてえたっぷりで大満足です！) (12月16日 16時) (レス) @page42 id: 8ed95612e3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：琥珀 | 作成日時：2023年9月17日 23時
