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「運命は、信じないな。だが、それは人によって受け取り方が違うと思うぞ。
精市が運命だと思う人がいるのなら、それは運命だと思えばいい。誰かに言われて"運命ではない"思うようならそれは本当に運命ではないのではないか?」
柳なりの考え方が何処か正論に感じて幸村は息を飲んだ。
確かに、そう頷いてしまったら負けたように感じた。
でも反論することは出来ない。幸村はまた乾いた笑いを浮かべた。
両手を裏返し「やれやれ」とポーズをとった。
「君には完敗だよ、蓮二。」
「ふっ、長年の付き合いをなめるなよ、精市。」
「さすが我がテニス部の参謀.....と言いたいところだけど。 今回は君の友人として蓮二に言いたいことがあるんだ。」
幸村の真っ直ぐで真剣な瞳に柳も細目をゆっくりと見開いた。
「俺さ、運命なんて前は信じてなかったんだ。運命なんてあるわけないって、そんなの漫画の見すぎだって。
でもさ、実際運命ってあるのかもしれない。」
幸村は長い綺麗な睫毛を伏せて淡々と話す。
そんな幸村を、柳は優しい瞳で見る。
「何かピンときたんだ。俺、この人に呼ばれてるのかな、って。 この人しかいないんじゃないかな、って。」
それが運命かはわからないけど、といって舌を出した幸村の頭を柳は軽く撫でた。
言葉にすることが出来ないから。
今の気持ちを柳はどう表現していいかわからないから。
柳はテニスしか見ていなくて、恋愛など皆無だった彼が恋愛を視野に入れるようになったことを喜ばしく思った。
良かったな、という言葉には出来なくてそれよりももっと大事な言葉で言わなければならなかった。
それくらい柳にとって幸村は大切な存在なのだ。
「頑張れよ。 何かあったら言ってくれ。
相談に乗るくらいは出来るからな。」
柳の優しい声色に、幸村は微笑んだ。
男の柳でもその微笑みは心にくるものがあった。
不意に目尻が熱くなった。
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はな 梅 。(プロフ) - はな梅。の新垢です←←←←← (2017年6月1日 18時) (レス) id: 243f0f5015 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はな梅。 | 作成日時:2017年4月30日 10時