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あの後も、丸井はいつも通り接してきた。
Aは普通何かしら変化があるだろうに、何も変わらなかった丸井の態度に違和感を覚えた。
いつも通り笑う丸井。
いつもなら安心する笑みに恐怖を覚えた。
「丸井。」
「ん?」
「あのさ。さっきの。」
Aはこんなにドストライクに聞ける私も可笑しいな、と思いながらも丸井の目をしっかりと見つめた。
授業の合間の時間、クラスにはたくさんの生徒がいる。
外に出るという選択肢もあったはず、でもAは今ここで聞きたかったのだ。
「あ、あれかよぃ。」
顎に手を添えて考えるような素振りをした丸井。
それでもAは目線を外さなかった。
「忘れてくれよぃ。言っておきたかっただけだし。」
Aはホッとしたように息を吐いた。
丸井の告白が嫌だったわけではないのだ。ただ、Aには"秘密"があるから、いくら好きでも、いくら両思いでも気持ちに答えることはできない。
「...そっか。ありがとう?なのかな?
これからもよろしくね!」
どんな顔で
どんな声で
どんな事を
何をいえばいいか分からなくて、月並みなことしか言えなかったことをAは言い終わったあとに後悔した。
腕時計に目線を移すと授業まであと2分程度だった。
「もう授業始ま___」
「俺、ちょっと体調悪いから保健室行ってくるぜぃ! 先生に行っといてくれよぃ!じゃーな!」
「あ、うん...?」
体調悪いのなら、じゃーな、なんて言えないと思ったAだが小さく息を吐いて先生に丸井からの伝言を伝えに行った。
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良かったのか、悪かったのか。
正解なんてわからないけれど、Aはこれでいいんだと自分を納得させようとした。
大きく深呼吸をして
零れ落ちそうになった涙を止めた。
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はな 梅 。(プロフ) - はな梅。の新垢です←←←←← (2017年6月1日 18時) (レス) id: 243f0f5015 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はな梅。 | 作成日時:2017年4月30日 10時