夜殺し【国見英】 (ページ16)

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「あきらさん、何してんだろう」

カーテンをそっと開けて、雨で溺れそうな世界を見遣った。

窓に打ち付けられた粒たちにそっと手を伸ばす。
さしずめ、雨に閉じ込められたお嬢さまといったところか。

雨が降った日は、外に出るのが億劫になる。
それは朝の登校も夕方の下校も同じことで、休日には一歩も家から出ようとは思わない。
外に出てしまえば楽しいのに、どうしてか屋内ではそのことを忘れてしまうのだ。

今日だって、この雨の中歩んでいく勇気が出ないでいる。

雨という防壁を破っていくのがまだ怖いのかもしれない。
夜に見つかってしまうと心のどこかで感じているのかもしれない。

結局私はビビリなのだ。
殺気を向けられることに恐れて、唯一の救済にも手を伸ばせないほど臆病なのだ。ごみッカスだ。

あの人が、私の連絡もなしにやって来るとは到底思えなかった。

きっと今頃は電車に揺られてスマホを覗いているのだろう。駅に着いてから傘が無いことに気づいて呆然していたりするだろうか。
それとも、1日中家にいて外の空気を吸っていないかもしれない。

考えれば考えるだけ、会って話したいという思いが膨らんでいく。
でも、やはりというか私には勇気が足りなくて、電子機器に頼ってしまうのだ。

＜今日はいきません＞

たった一言だけ送って、カーテンを閉めた。

最近は散歩のお陰で比較的寝付きが良いのだから、1日くらいなんとかなる。一晩の我慢だ。それに雨はいつも味方だったじゃないか。

ベッドに滑り混んで布団をかぶった。久しぶりにやってきた、長い長い夜だった。