夜殺し【国見英】 (ページ11)

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今日も今日とて、人目に付かぬように夜を歩いた。
昨日と全く同じ道を歩くのは癪なので初めの角は曲がらずに、一本先の道を右に入る。その次も、昨日と被りそうになると曲がるのをやめ、違うルートで迂回する。

ただ、最終目的地はどうしてか変更する気にはなれなかった。
意識せずとも思い描いているのだ。行くなと言う方が無理な話だった。

昨日と違うのはもう一つ。魔法の空想はしなかった。

草木がそよぐのを眺めて歩き、空を見上げては星の海を見た。
やはりと言うか、オリオン座は今日もいないようだった。

昨日とは違うスウェットだから、というのも魔法にかからなかった原因かもしれないが、そんなことをせずとも夜は楽しめるのだ。
空想は1日きりのトッピングなのだ。シンデレラの魔法と同じように、次の日にはお役御免になる。

ただのスニーカーでたどり着いた目的地は、昨日の小道だ。

安心を伴った夜が始まった場所。
あの人が親切心から声をかけてくれ、会話を楽しんで安全地帯まで共にいてくれたのは、昨日の私がこの道を選んだからだ。

木の生い茂る道を目にしまい込む。

今日は通らないでおこうと、なんとなしに思った。
あの人なしでこの道を通り切るのは、なんだか大事なパーツを変えてしまうような行為に思えたのかもしれない。

くるりと方向転換をした。せっかくICカードも持ってきたのだから飲み物でも買ってやろうと思い立つ。
昨日あの人が言っていたことが正しければ、神社の近所に自動販売機があるはずだ。

遠回りをして神社近辺にたどり着くと、不自然に光を放つ縦長の箱が目に入った。
祭り以外では神社の明かりも少ないので、余計に目立っている。そうなると、気持ちは神社の方へ持っていかれるわけで、妖しい雰囲気に惹かれてしまう。

ゆずのジュースを手に、暗闇に閉ざされた境内へ近づいていく。
ひりついた恐怖心が、ほんの少しだけ気持ちいいと勘違いしてしまいそうになる。もし、足を踏み入れたら天狗にでも食われてしまうのだろうか。
鳥居の前の階段に足が伸びず、闇の空気に飲み込まれそうだった。

「こんな所で何してんの」
「ひいっ」

突然の声に驚いて振り向けば、呆れ顔のあの人が立っていた。