『 元 担。』

元 7 ページ7

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「Aー、今日空いてる？」









「ごめん！今日ちょっと予定があるの！」









1階に向かうエレベーターの中

鞄からスマホを出しながらそう答える









「お、なんだなんだ、男か？」









そんな風に茶化してくる美波をじろりと睨む









「ふふっ、冗談よ。楽しんでね」









そう言って彼女は会社を出ると駅のある方の道を歩いて行った


と、同時に私はタクシーを停めて中に乗り込む


行先を告げてスマホの電源を入れると、時刻は既に約束の時間の20分前で




ぎりぎり…


もう、なんで今日に限って残業頼まれるの




終業時間ぎりぎりに私の机の上に分厚いファイルを置いていった上司をこれでもかというほど憎んだ



あっという間に着いた焼肉屋さんの少し前に車を停めてもらって、お金を払ってタクシーから降りると









「…あ」









見覚えのある細身なシルエットがうっすらとお店のランプに照らされていた


深く深呼吸をして、ヒールの音をコツコツと響かせて彼に近づく









「…あの」









私が声をかけると、彼はスマホから顔を上げ









「あ、こんばんは」









そう言ってマスクを少し下にずらした




うわあ、何今の仕草…








「こ、こんばんは」









「えっと、とりあえず行きましょう」









そう言った彼は弄っていたスマホで何処かに連絡をすると、大通りに向かって歩き出した




え、焼肉じゃないの？


疑問を抱きながらも彼の後ろをついていく








「あ、こっちです」








少し距離の空いた私を呼んだ彼の元へ小走りで向かうと、1台の高級車がハザードランプを出して止まっていた









「…え、あの」









「あ、どうぞ、乗ってください」









言われるがまま、その車の後部座席に乗せられた私


彼はドアを閉めると助手席に乗り込んだ




何が何だか…








「お姉さん、久しぶり」







混乱した頭に響くハスキーボイス


ミラー越しに見えた整った顔



そこでやっと理解した


これ、平野の車だ







「あ、えと、お久しぶりです…？」







「紫耀、ほら出してや」








はーい、なんて永瀬の言葉に返事してゆっくりと車を発進させた平野




え、てか免許持ってるの？


いつの間に取ったんだか…




1年でいろいろと変わりすぎだよ、君たち









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