縁無 2

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掴まれた右手の手首は、熱かった。多分私の体温では無い。内村くんの熱がまだ下がっていないことを示していた。むしろ顔も来た時より赤くなっているように見える。熱の時の1人でいる時の切なさと言うのは測りきれない。

帰らないよ、と言った時の内村くんの顔は、何故か切なそうで、怒りに満ちていた。

颯太「……いんだよ」
『…え？』
颯太「……っ！ うざいんだよ！なに偽善者ぶってんの！？ 目障りなんだよ、目障りなんだよ耳障りなんだよ！！包丁の音も、この匂いも！全部が俺にとって嫌なことでしか無いの！！！」
『…………』
颯太「どうせ平塚辺りから俺のこと聞いたんでしょ？みんなそうやって興味本位で聞いてきて、勝手に可哀想って言って、…誰も俺のことなんてどうでもいいくせに！！」

内村くんはそう叫びながら、私の手を振り払った。目には涙を浮かべて、今すぐにでも大粒の涙が零れてきそうだった。

颯太「みんな、俺だけ残して、…っもうやなんだよ、思い出させんなよ、…迷惑だから…………」
『…っ、そうやってすぐ独りになろうとするから、思い出してくんじゃないの』
颯太「…は？ ……なに、」
『ほんとは独りが怖くて、だけど誰かが離れていくのが怖いから、勝手に独りになって』

そう言った瞬間私の胸ぐらは内村くんに掴まれた。赤く染まった頬と一緒に、涙を浮かべた瞳は怒気を秘めていた。

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