縁無 2

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トントントントン、と久しぶりに家に響く音で目が覚めた。扉が少し空いていたため、部屋まで漂ってくる良い香りは、俺の心をかなりざわつかせた。

料理する音、自分の部屋で料理ができるのを待つ感覚、おでこに感じる冷たさ。身に起こっていること全てが、昔の記憶を思い出させる材料だった。

寝ていられなくて、思わず1階へ降りる。体はまだだるいけど、そんなこと言っていられる余裕は無かった。リビングに降りると、キッチンにAちゃんの姿。少し心配した顔で、こちらを見ていた。

…なに勝手なことしてくれてんの？

気づいたら俺の体は動いていて、Aちゃんを扉の前まで引っ張った。

颯太「帰って、……お願い」

Aちゃんに嫌な思いはさせたくなくて、どうにか俺の中の感情を出さないように手首を掴んでいない方の手を握りしめる。

お願いだから、お願いだから帰ってくれ。…頼むよ、

すると、Aちゃんは手首を掴んだ俺の手を離して、ぎゅっと包み込んだ。

『……帰らないよ、』
颯太「…は？」
『まだ熱いよ。わかんないけど、まだ帰れない』

そう言いながら俺の目を見るAちゃんの目は、何だか無性に腹が立ってしまった。

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