縁無 2

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後ろから聞こえてくるそんな声。その声の主を、私は知ってる。

「…内村くん、」
颯太「俺もお話した〜い」

そう言いながら内村くんは階段を登ってくる。周りの女子たちの顔は、強ばっていた。

颯太「なんの話？」
「…別に、」
颯太「えぇ〜いいじゃん教えてよ、減るもんじゃないし」
「内村、減るもんじゃないなんて言葉知ってたんだね」
颯太「知ってるわ(笑)」

さすが。内村くんは人との距離を詰めるのが早い。さっきまで強ばっていた雰囲気が、少し和らいだ。

颯太「…平塚とのことだったらさ、」
「……っ、」
颯太「辞めときな？ 平塚Aちゃんといる時めっちゃ楽しそうだもん。無理に離すようなことしないであげてよ」
「…じゃあ、内村くん今度一緒に遊ぼうよ。この流れで言うのもなんだけど」

先輩であろう1人が、内村くんの近くへ詰め寄る。上目遣いをしながら、内村くんのワイシャツの裾をキュッと掴んだ。

…いや、すごいな、慣れてる。この人に対して、内村くんはなんて返すのだろうか。軽くあしらいそうだけど。

颯太「…良いですよ？(笑) 2人でね」
「……えっ、ほんと、？」
颯太「嫌なの？」
「…やじゃない！」

予想外のやり取りを目の当たりにして、驚きが隠せなかった。きっと私の顔は相当間抜け面になっているんだと思う。

「え、内村私は〜！？」
颯太「じゃあ岩井はその次遊ぼっか」

次々と内村くんに群がっていく女の子たちを、私は見るだけしかできなかった。笑う内村くんの右腕は、さっきの先輩の肩の上に乗っている。

…そっか。内村くんも、やっぱり遊びたい、よね。
内村くんはそういうの、拒む人だと勝手に思ってた。
私の中で勝手に、理想の内村くんが頭の中に残っていたけれど、それは間違いだったらしい。女の子達の目が内村くんに向いている間に、私はその場から早足で立ち去った。

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