１７５ ページ38
『……え』
心葉｢ちっさい時から、ヒーローなんか眼中に無い。オールマイト以外の名前も知らん。ただ、ずっとウチの後追いしてただけ。
何、勘違いしてるか知らんけど。Aはウチおらななんも出来ひんの。そうやないとアカンの。分かる？｣
姉が私の頬に手を添えた。言葉を連ねる事に手に力が込められる。痛い。爪が、頬に食いこんで。
心葉｢本当の家族になろ。A｣
どういうこと。今は本当の家族ではないの？ずっと。姉が敵になっても、家族だって信じていたのは私だけ？
『……敵連合には、入られへん』
死ぬほど、苦しくて傷ついているはずなのに頭は冷静だ。世間的に、正解の回答を出せたと思う。
しかし、姉は表情変えず私の顔から手を離した。代わりに首元へ手が伸びる。
ブチッ。
嫌な鈍い音が響いて、目の前にシルバーの破片が散る。常に、首元に光っていたはずのネックレスだ。
『え』
心葉｢……いらんやろ。他人から受け取ったもん律儀に付けとんなよ。トガちゃん、拘束｣
トガ｢いいんですか？ 妹さんなんですよね？｣
姉が、冷たい目線を私に落とす。
心葉｢妹じゃなくなったわ。今｣
姉の言葉が、槍のように心に刺さった。
心葉｢トガちゃん、歳も近いやろ。話し相手したって｣
トガ｢はい！｣
姉は、そう言って部屋を出ていってしまう。私は椅子に座ったままロープで固定された。トイレに行きたい時はどうすればいいんだろう。
あぁ、でもなんか。そんなことすらどうでもいいかもしれない。
トガ｢Aちゃん、好きな人いる？ 私はねぇ、出久くんがボロボロでかっこよかったです！｣
『……好きな人、居ないかな』
私は、ポツリと呟いた。
『好きな人がおるって、どんな気持ち』
私は、ゆっくりと首をトガさんに向けた。彼女は、一度目を丸くしたあとニンマリと口角を上げた。
トガ｢血が欲しくなります！ その人の全部が欲しくなって、その人になりたくなるの！ だから、最後には切り刻むの｣
『そうなんや』
……やっぱり、理解はできない。敵はどこまで行っても、人間社会に馴染めなかった人たちの果てだ。
『私は、好きな人にはどうしたくなんだろうね』
トガ｢私、Aちゃんも好き。Aちゃんにもなりたいの。チウチウしていい？｣
チウチウなんて、可愛い擬音だけれど端的に言えば血を吸わせてくれと言っている。
あぁ、でも抵抗は出来ないしするのも面倒だな。
『死ぬのはやだよ。少しだけ』
私は、肩あたりの血を吸いやすいように首を傾けた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 257人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みすじ。(プロフ) - エリスさん» 嬉しいコメントありがとうございます！これからも更新頑張ります。爆豪くん、良いですよね！ (3月27日 11時) (
レス) @page17 id: 5f57a4ca31 (このIDを非表示/違反報告)
エリス(プロフ) - 一気読みしちゃいました！更新楽しみすぎます！ばくごーくんオチに1票！ (3月26日 22時) (レス) @page16 id: 6970de97bc (このIDを非表示/違反報告)
みすじ。(プロフ) - 夜桜さん» 檻守ちゃん褒めてくれて嬉しいです。ありがとうございます！！！ (3月24日 17時) (レス) id: 5f57a4ca31 (このIDを非表示/違反報告)
夜桜 - めっちゃ面白いです！檻守ちゃんめっちゃ可愛いです！！！ (3月24日 14時) (レス) @page9 id: 8f7b32c140 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みすじ。 | 作成日時：2024年3月24日 13時
