ep17 ページ17
.
しばらく歩いて、立ち止まった彼は
肘を掴んでいた腕を下ろして、やまちゃんの指に自分の指を絡めた。
「ふざけないで」
なんだ、怒ってるじゃん。
さっきのは強がりで、知念だって、嫌なことは嫌だったんだ。
「勝手に怒ったくせに、女の子がいいなんて、僕のこと傷つけたいの？何がしたいの？泣いてほしいの？」
久しぶりに怒った知念を見て、俺までも凍りついたように身体が動かなくなった。
修羅場を目の前に帰った方がいいのか、それともなんとかしたほうがいいのか。
「.....もうわかんない、」
唐突に涙がこぼれて、涼しい風が頬に当たり、涙が薄く落ちていく。
やまちゃんの指を掴んだ方と違う手で涙を拭い、肩を震えさせた。
あまりに悲壮な様子にやまちゃんは何も言えなくなって、おそるおそるといった様子で知念を抱きしめた。
「......ごめん、」
.
俺はすぐに帰ろうとしたけど、知念が「圭人のうちで話そう」と言ったせいで、またも巻き込まれるハメになった。
やまちゃんは縋り付くように俺を見る。
助けて欲しいなら、それなりの態度を示さないといけない。
やまちゃんはポツリ、ポツリ、と話し始めた。
おしりを触られたことが嫌だったこと。自分に自信が出ないこと。未だに付き合ったという確信がないこと。
話し始めて気づいた自分の情けなさに項垂れて、「ごめん」と呟いた。
「ごめん、どうしようもなくて」
仕方ないことだと思った。
やまちゃんは十年もの片思いを耐え忍び、ブレずに彼のことだけを見て、彼のことだけを守り抜いた。
今さら実って、実感が湧かないのも無理はない。
やまちゃんの話を黙って聞いていた知念は急に立ち上がり、
小さいテーブルの正面に座るやまちゃんの胸ぐらを掴んで、軽く持ち上げるようにして自分の唇まで引き寄せた。
目の前でぶつかった唇に、俺は慌てて目を塞ぐ。
「そんなの、知ってる。涼介のダメなところも、全部知ってる」
そのまま彼を見下ろして、静かに低い声を出した。
「それも、全部好きだから付き合ったのに、そんなことばっかり言わないで」
驚いた顔をしていたやまちゃんはすぐ真剣な表情に戻った。
知念の腕を掴み、自分の方に引き寄せて頬に触れた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 726人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「Hey!Say!JUMP」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
彗桃(プロフ) - 男に絡まれる知念ちゃん、不憫ですが可愛くて涙出てきました（；；）なん様の書くやまちねだいすきです！ (2018年1月22日 2時) (
レス) id: 89eb2c9c11 (このIDを非表示/違反報告)
神楽(プロフ) - 初めまして！なん様の書くちねんちゃんが可愛すぎて、何度も何度も読み返しております、うふふ。これからも妖精ちねんちゃんと溺愛やまだくんを楽しみにしております！ (2017年7月16日 20時) (レス) id: d1428fae49 (このIDを非表示/違反報告)
なん(プロフ) - ぷよぷよさん» コメントありがとうございます(^^) 宝物って表現かわいいですね、、かわいいやまちね書けるようにがんばります！ (2017年7月16日 19時) (レス) id: 8f0c21e9ab (このIDを非表示/違反報告)
なん(プロフ) - ぁぃさん» リアル知念くんの話し方が妖精なんでしかたないですね....コメントありがとうございます！ (2017年7月16日 19時) (レス) id: 8f0c21e9ab (このIDを非表示/違反報告)
なん(プロフ) - ゆーきさん» いえこちらこそいつも読んでくださりありがとうございます（ ; ; ） (2017年7月16日 19時) (レス) id: 8f0c21e9ab (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：なん
| 作成日時：2017年1月11日 0時
