冷酷な王子は ep1 ページ1
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一年の山田。
それは、小学校に入学したときも、中学も、高校も。
彼の名は瞬く間に有名になった。
学年に三人はいる山田という名の生徒を泣かす勢いで、彼の存在は一気に広まっていった。
それは止まる事を知らず。
古風ではあるが、彼の下駄箱には頻繁にラブレターが入っていた。
「やまちゃん、手紙落ちたよ」
ぼろぼろとこぼれ落ちた数枚のラブレターの上に乱雑に上履きを投げ落とした。
「あー、今日、掃除あるし、」
放課後の下駄箱掃除に当たる学年の王子さまはそのまま前を歩いていく。
手紙の送り主を心の底から不憫におもった。
俺はそれを一枚ずつ拾って、その後を追う。
部活のときもそうだった。
彼を見にきた他校の生徒がフェンスに張り付いて、集中力を阻害するレベルで騒ぎたてるのだ。
殺伐とした空気を漂わせた幼なじみが、彼女らの目の前で舌打ちをし、
一瞬にして静まり返るグラウンドの外。
彼にひどいことを言われて涙を流す女の子に頭を下げるのは、小さい頃から俺の仕事だった。
学年で一番の美人が、さぞ自信ありげに彼の前に現れたある日。
弁当にトマトが入っていることに気づき、顔をしかめた山田の前に。
「私と付き合ってください」
やけに綺麗な言葉遣いで、きれいに微笑んだ彼女に、俺は好感が持てた。
性格が良くないとか、いろんな噂があったけれど。意外と普通にいい子じゃん、と。
クラス中が注目する中、冷酷な王子は、顔を上げてしまった。
俺は自分の弁当に入れられたプチトマトを見つめながら、心の中で彼女に謝罪した。
うちの山ちゃん、モテすぎて性格ひん曲がっちゃったから....とどうしようもない言い訳を。
「うるせえんだよ。ブス」
俺が彼女にごめんね、という前に、彼女は教室を去ってしまった。
百歩譲っても、彼女はブスではなかった。
彼の瞳にはそう映ってしまっているのかもしれないが。
高い自尊心と自意識の中で生きているような彼女は、初めて投げられた言葉に耐えきれなくなった。
これを機に彼の人気は急落下、と思いきや、
彼についたあだ名は冷酷な王子。
そしてますます神聖なものと扱われた。
廊下を歩けば黄色い声が。その目が合うとくらりときてしまう生徒まで。
俺はまたペコペコ頭を下げる日々が続いた。
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彗桃(プロフ) - 男に絡まれる知念ちゃん、不憫ですが可愛くて涙出てきました(;;)なん様の書くやまちねだいすきです! (2018年1月22日 2時) (レス) id: 89eb2c9c11 (このIDを非表示/違反報告)
神楽(プロフ) - 初めまして!なん様の書くちねんちゃんが可愛すぎて、何度も何度も読み返しております、うふふ。これからも妖精ちねんちゃんと溺愛やまだくんを楽しみにしております! (2017年7月16日 20時) (レス) id: d1428fae49 (このIDを非表示/違反報告)
なん(プロフ) - ぷよぷよさん» コメントありがとうございます(^^) 宝物って表現かわいいですね、、かわいいやまちね書けるようにがんばります! (2017年7月16日 19時) (レス) id: 8f0c21e9ab (このIDを非表示/違反報告)
なん(プロフ) - ぁぃさん» リアル知念くんの話し方が妖精なんでしかたないですね....コメントありがとうございます! (2017年7月16日 19時) (レス) id: 8f0c21e9ab (このIDを非表示/違反報告)
なん(プロフ) - ゆーきさん» いえこちらこそいつも読んでくださりありがとうございます( ; ; ) (2017年7月16日 19時) (レス) id: 8f0c21e9ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なん | 作成日時:2017年1月11日 0時