とある少女の生まれ ページ1
あるところに美しい娘と逞しい男がおりました
運命の如く出会った二人は互いに惹かれあい
ついに結ばれたのです
その後、二人の間にはこれまたかわいらしい女児が生まれ
三人は幸せに暮らしましたとさ
なんてね
この物語にはいくつもの嘘がある
まぁ、まとめて言っちゃえば、幸せになんて暮らせなかったってことさ
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ﾊﾞﾁﾝｯ
思いっきり肌を叩くときってさ、ﾊﾟﾁｯなんてかわいい音じゃないんだよ
「お前はいつもそうだ！やっと録な子供を生んだと思ったら...お前さえ、お前たちさえいな
ければ！」
物語の『本当』を教えてあげようか？
自分で言うのもなんだと思うが、かわいらしい女児とは私、Aのこと
美しい娘は、母さん。今叩かれた人のこと
ここまで来れば分かると思うけど、逞しい男ってのが父さん。今母さんを殴った人のこと
私は父さんが大嫌いだ。
幸せに暮らしていた家族は、ある日崩れ始めた
父が仕事で問題を起こした
だが、実際、父はやっていないのであろう。責任を押し付けられた父さんは辞職を余儀無くされた。
まぁ、父がいなくなってすぐにその元勤め先も倒産したんだが(笑)
誰も信じられなくなった父は酒に溺れた
酔った父さんは、いつも母さんに手をあげた
母さんの綺麗な顔にはいくつもの青アザができていた
父さんは私にも暴力を奮った
体の青アザが増えれば増えるほど借金も増えた
「ごめんなさい...ごめんなさいぃ....。」
謝り続けることしか出来ない母さんも嫌いだ
見たくないものから目線を逸らすため、無理に顔の向きを変えれば
唯一、幸せだった頃から変わらない漫画だけが目に入った
まだ父さんが優しかった時に買い続けていたというその物語の人物たちに
麦わらの彼に
多くの家族をもつあの人に
いや、彼らのもつ自由に
どれ程憧れただろう
「わっ、たっしが...稼ぎます、から...許、して...。」
...手の届かない場所をどれ程見つめても意味はないな
私が下らないことをしていた間に父のDVは終わったのだろうか
過呼吸になりながら話す母さんがあまりに惨めに思えた
「お前に稼げるわけねーだろうがよぉ！！明日までに借金返せたら、信用してやるよ。クソ女が」
ﾊﾞﾀﾝ
罵声を吐きながら出ていった父さんを尻目に母さんを見つめる
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一話目から暗い内容ですみません( ＞Д＜；)
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作者名：赤津 モミヂ | 作成日時：2018年4月19日 22時
