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ep.171 ページ35

Side 大地



あれからの数時間、ぽっかりと記憶が抜けている。


縁下が武田先生を呼んで来てくれた、はずだ。
救急車のサイレンを聞いた気がする。

気がつけば俺は、病院のベッドで横たわるAの手を握って、
併置された椅子に座っていた。



武田「――澤村くん」

大地「あ……はい」

武田「すみません、僕が代わりにお医者様のお話を聞いて来ました。
今日明日のうちに目を覚ますだろうということですよ。
正確な検査は、その後だそうです」

大地「そう、ですか。
あの、俺……」

武田「今日はここにいてもいいそうです。
ですが、澤村さん…Aさんの目が覚めたら、
残酷なようではありますが、明日は学校へ行くべきだと思います」


君は受験生であり、主将です。
勿論彼女の兄ではありますが保護者ではないですから、
と武田先生は告げる。

紛れも無い、正論だ。


大地「……わかってます。
すみません、俺が取り乱したらダメだって、
頭ではわかってたんですが…。

あの、他の奴らは?」

武田「烏養くんと菅原くんが仕切ってくれたみたいです。
僕もこちらへ来てしまったので詳しくはわかりませんが、部活は切り上げたみたいで。
先程三年生の皆が君たちの荷物を持って来てくれてましたが…覚えていませんか?」

大地「……ああ、なんとなく」


旭の「無理すんなよ、大地」という声、
清水の「澤村が倒れたりしたらAちゃんもっと心配するでしょ」という言葉、
スガが肩を掴んだ感触が、朧げに残っている。

視線を向ければ二人分の荷物の上にビニール袋、
中からは携帯食のゼリーが覗いていた。
「澤村、せめてこんなモンでも食っとけよ」という、
見慣れた烏養さんの書き置きが貼ってある。

本当に良い仲間を持ったものだ。


武田「親御さんの方には僕からも連絡を入れておきます。
澤村くんも、もちろん心配なのはわかりますしそれは僕も同じですが、
あまり無理はしないようにしてくださいね。

もし覚えていれば、Aさんが気がついた際に
連絡をいただけると助かります」

大地「わかりました」


それでは、と頭を下げると武田先生は出て行く。

全く食欲は湧かないままだったが、
置いていかれたゼリーを一つ口にした。
味なんて殆ど感じなかったが、滑り落ちて行くゼリーの冷たさが心地よかった。

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中村茜雫(プロフ) - らんしゃむさん» らんしゃむ様 コメントありがとうございます。紹介にもあるよう死ネタとなっております、申し訳ありません…。ただお声が多ければifで主が死なずに済む√を作ることも考えています。何卒お願い致します。もし良ければ最後までお付き合い頂けると嬉しいです。 (2019年3月6日 23時) (レス) id: 928f90edf9 (このIDを非表示/違反報告)
らんしゃむ(プロフ) - え、死ネタですか、、、回避できないですかね? (2019年3月6日 4時) (レス) id: dfe0d85699 (このIDを非表示/違反報告)
中村茜雫(プロフ) - 桜ひかりさん» 桜ひかり様 コメントありがとうございます!予定はありませんが、全て書き終えた後に私の気力が残っていれば…本編とは別のサブルートとしてなら或いは……!需要にもよりますのであまり強い期待はなさらず頂けますとありがたいです。最後までどうぞお付き合い下さい。 (2018年10月28日 18時) (レス) id: 928f90edf9 (このIDを非表示/違反報告)
桜ひかり(プロフ) - 別の生存ルートとか作っていただけたり…しないですね笑更新楽しみです (2018年10月28日 14時) (レス) id: 4bee8b72e3 (このIDを非表示/違反報告)
中村茜雫(プロフ) - なおみさん» なおみ様 再びコメントありがとうございます。死ネタ苦手でしたら申し訳ないです…! 最後まで夢主ちゃんの日常を尽くせる限りを尽くして書き切ろうと思いますのでよければどうぞ最終話までお付き合い下さいませ。 (2018年10月27日 8時) (レス) id: 928f90edf9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:中村茜雫 | 作成日時:2018年10月10日 8時

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