198# 神埼鈴子の『夢』 ページ48
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75期と77期が泊まる部屋のバスタブには透明のお湯が張っている。そこに浸かるは、クラゲに刺された箇所が滲みる真琴。窓を開けた先では深い青の空と、深い青の海がどこまでも続いていた。
そこへ現れたのは、さすがに曇るからとメガネを外した鈴子。二言三言話したら彼女は前を隠すタオルを一旦おいて、湯船の前にシャワーを浴びるらしい。
真琴は、歳下に気を遣われているなぁとは感じつつも……今は「ひいぃ、滲みる滲みる！ 痛……」と、クラゲ刺症に意識を持っていかれているようにも見える。
「真琴さんはありのまま、そのままでいいと思うんですけど」
「…………鈴子はいいよね。可愛いし、スタイルも良いしさ。何気に襲名早そうじゃんかぁ」
「わたしは、00に入りたかったけど。襲名がしたいんじゃないんです」
「へ？」
温かい粒は鈴子の体を濡らしてゆく。そして輪郭をなぞり、重力に従って落ちる。パーマをかけた毛先も同じだ。
いや、そんなことよりも。00の研究生であるはずの鈴子は、襲名が目的じゃないとはっきり口に出した。このことにはさすがに真琴も目を見開いて驚く。
「わたし、いずれはツバサさんみたいになりたいんです」
「ツバサさん？」
「わたしも、真琴さんと同じ。自分のこと、あまり好きじゃありませんでした。……そんなとき、00に出会った」
鈴子はキュキュと栓を回す。お湯の雨を止め、湯船に真琴と向かいあわせで浸かる。そして、自分の話を始めた。
彼女の地元・
森の動物たちと共存しているようなところで、窓から外を見ても特別に心が動かされるものはない。いつもと同じ景色。
そんなときに聞こえてきた、音楽。祖母がTVをつけたらしい。画面の中には見たこともないほどに華やかな世界が広がっていた。たくさんの光が溢れていた。そして、それだけじゃない。
「00には色んな子がいて、色んな輝きを発しています。グングン成長する子も、ゆっくりと歩む子も。どう進むのかが正解なんて、無い……」
鈴子は、誰かになりたいのではなく
「いつか、00のために働けるようになりたいんです」
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2022年10月21日 14時
