185# 道中 ページ35
▽
いくつか寝たらあっという間に撮影当日。私服でカチューシャに乗船してキララドライブを経由、すると目的地はもう目の前だ。
濃淡の青いグラデーションに薄雲が浮かんで、吸い込まれそうなくらいに綺麗。一番濃い青は私の一番好きな色でもあり、瑠璃色とも呼ばれる。
「見てみて？ 青いよ、青いーーー！ 海、海！！」
「熱海星は殆どが海ですものねぇ〜」
「わーいっ」
今回はライブに行くわけではない。そのため食堂兼ミーティング室に腰かけ、飲み物片手にゆっくり談笑中。二つ向こうのテーブルには襲名メンバーも何人か見える。
砂漠出身の楚方は熱海星が見えてきて、さらにテンションが上がっているらしい。文字通り目をキラキラさせた。立ち上がってぴょんぴょん跳ねてもいる。
よほど楽しみらしい。隣に座る真琴に間食のドーナツをおすそ分けしている。こんがり狐色の生地に、苺とホワイトチョコのソースがけ。極めつけにはフリーズドライをしたラズベリーのパウダーまでかかっている。
いつもの真琴ならすぐかぶりつくはずなのに。今日は手を伸ばすこともせず、微妙な顔をして目を逸らした。
「真琴、朝ごはんも食べていなかったではありませんの〜」
「ドーナツ、大好きでしょう……？」
「この前まで『バター醤油かけご飯は宝石箱や〜！』って、いっぱい食べていたのに」
「あんなもの、宝石箱じゃ無いっす！」
「えっ！？」
高カロリーの食べ物が大好きな真琴。パパコックが作る食事も、毎回おかわりしていたというのに。
ここ数日は食べる量が減ったというか、今朝は少食さえも抜いていた。いくらレッスンがないとはいえ、朝はきちんと食べないと色々もたないと思うが……。
お仕事が来る前は大きなバターのカットを白米に乗せて、醤油をかけすぎなほどにかけて、見てるだけで胸焼けしそうな炭水化物をかきこんでいたというのに。
お米一粒一粒に油がじんわりとまわり、噛みしめれば噛みしめるほどにバターと醤油の深い味わいのハーモニーが広がる。あんなに立派な食レポをしていた彼女はどこに行ったんだろう。今や、それを罠とまで言っている。
「具合でも悪いの？」
「うわっ……い、いやぁ。う、宇宙酔い……かなっ？ 多分」
友歌や楚方も、心配そうな顔でその場を見守っている。
十中八九ダイエットだろうな、うん。まあ数日頑張ったくらいで成果が出るわけない。食べた方がいいよ。無理な絶食はだめ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 60人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：東雲れーた | 作成日時：2022年10月21日 14時
