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『あの子たちは可愛いよ。でも、何よりも大切なのは夢だよ。自分の夢』
『自分の………夢、』
『あたしたちは00として、同じ夢を追いかけている。でも、その夢のカタチは少しずつ違っている。……誰かと同じ夢を見ることなんて幻想なんだ。自分の夢は自分だけのもの』
▽
「もう一度言ったの。自分の夢に向かって走り続ける。それの何が悪いのかって」
凪沙たちが優子さんに憧れる理由がわかる気がする。何にもとらわれず、自分が思うままに夢を追っているからだ。そうだよ、これが9代目大島優子。
全部に全力投球。しかも楽しむことも忘れないで。人を惹きつけるパワーを持っている人。
「今の話を踏まえて、あんたに聞きたい」
「……はい」
「00に入りたいと思う理由も人それぞれ。あたしはそこをどうこう言うつもりはないけれど、思ったんだ。Aの夢って何？」
ああ、ついに。ついに……言われてしまった。
優子さんは続ける。
「芯が通ってて、SNSの更新も欠かさない。襲名メンバーにも積極的に話しかけに来る。研究生になったにしては早すぎるくらい外の仕事も来てるんでしょ？ こんな子、滅多に見ないよ」
「えっと……褒められました？ 今」
「そのつもりだけど……うん、だけど。夢とか誰を襲名したいとか、さ。そういうの一切聞こえてこないから、どうなんだろうって」
Aは00に入ってどうなりたいの？ 優子さんの言葉が胸に刺さる。AKB0048の曲に感動して突き刺さるのとは全然違う。
チクンって、痛い。じわじわと傷口から血が広がるみたいな。00との出会い、入りたいと思ったキッカケ。00に関わる記憶が走馬灯のように次々と浮かんだ。……それでも、返事は出てこない。
「努力家って周りは言うけど、Aにはいざというとき、どうしても譲らないっていう強情さが足りないよ。……戦闘にまわるときも、言葉は立派だけどそれだけ。本気でアイドルになりたいって思ってる？」
「つまり、優子さんの目には……私がそうは映っていないってことですか」
捲し立てるように言った優子さんに、逆に聞く。すると彼女は脱力したように「わかんない」と言ったのだ。
なんだその答えは……。はいでもいいえでもない。混乱してしまう。…………いや、混乱させていたのはむしろ私の方なのかもしれない。変わりたい、それだけじゃダメだ。
今すぐ答えは得られないと思ったんだろう。優子さんは私を残し、この場から立ち去った。
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2022年10月21日 14時
