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開口一番、今度は彼女が「ごめん」と言う。私にはわけが分からなかった。そんなことをされる覚えは無い。いったい何に対しての謝罪なんだ。
オロオロしていたら、優子さんは続ける。
「ゆきりんも才加も、もちろん他のみんなもね。Aが悪いなんて思ってないよ。……たかみなが、00を想っている気持ちっていうの？ そういうの知ってるから」
でも、二曲目が終わってカミングアウトされたあのときは、反射的にAに目が行っちゃって。Aは自分のせいだって悩んでいたのにね。それに対しての「ごめん」。
優子さんは背中を壁に預ける。その横顔はまだ何か言いたそう。私は静かに次の言葉を待った。
「たかみなが無理をしたの、もしかしたらあたしが焚きつけたのかも。それは後悔していない。……でも、たかみながそうまでして出たいと懇願した訳。Aは知っていてもいいかと思って」
「……………」
「目覚めて最初の言葉、なんだったと思う？ 才加や佐江たちの無事よりも先に、まだ辞めたくないって。たかみな……そう言ったんだ」
..
時は遡る。彼方が無理やり医務室を追い出されて少し後のこと、たかみなが目を覚ました。らしくない振る舞いに見えた彼女に、ずっと着いていた優子は「いつもの"冷静丁寧正確に"はどうしたんだっての」と言う。
しかし、たかみなはそれには応えない。涙腺が壊れて涙が溢れるように、今の想いを吐露し始めたのだった。
『ウチは、歌だって上手くない。踊りだってそれなりで。取り柄なくて、自信なかった。……でも、5代目たかみなに選ばれて。やっと自分に自信が持てるようになった……っ。
たかみなでいたい、00でいたい。絶対に……卒業、したくないっ……！ でも……でも！ ウチがいたら、彼方はずっと研究生のまま。あの子、あんなに頑張ってる……！ あんなにウチのこと、慕ってくれてる。……キラキラした真っ直ぐな目で、ウチのこと。なのに、ウチは……自分の夢のためにあの子の夢を奪ってる』
たかみなの頬を雫が伝う。泣き顔を見られたくない、もしくは自分には泣く資格がないとでも思っているのか。彼女は優子から隠すように反対側へ寝返りを打つ。
自分と健気な後輩。二つの夢で揺れるたかみなへ、優子は「それの何がいけない？」と悪気なく返す。これには思わず涙が引っ込んだ。たかみなは、優子を「何を言ってるの」というように見た。
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2022年10月21日 14時
