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▼Megumi
すごい。さすがヨーコ。こんなに早く襲名するなんて。当時は感激して、自分のことのように嬉しかったはずなのに。彼女はいつの間にか追いつけないスピードでボクから離れていった。
二人で00に入って、二人で襲名したかったのに。八つ当たりしても何も変わらない。ヨーコはボクの隣には帰ってこない。そんなの分かってる。それでも、ボクの気持ちを分かってくれないヨーコにふつふつと込み上げるものがある。
「メグ、ごめんね」
「どうして謝るの！！」
「あっ、……そうだよね」
ヨーコは悪くないのに。だってボクはずっと見ていたんだ。襲名するために頑張っていたのはボクがいちばんよく知ってる。
……そうだ。ヨーコは、10代目宮澤佐江は。ボクのことなんか気にせずにステージのことだけ考えていればいい。一介の研究生のボクと一緒にいても得られるものはないんだから。
ボクは背を向けて突き放すように言う。
「研究生なんかとつるもうとしない方がいいよ。……佐江さん」
「………メグ」
「それは佐江さんの勝手では？」
「「！」」
ボクとヨーコしかここにはいなかったはず。盗み聞きされていた？ すぐ近くの開放されたままの出入口から姿を見せたのはA。ボクを追いかけてきたの？
口出すつもりはなかったんですけどねぇ、と言う割には表情を変えない。ニコリともしていない。得意の愛想を、ボクの前で浮かべるつもりはないのか。
「他の76期生の方に聞きましたよ。研究生時代のお二人のこと。そういうことだったんですね」
「何が……」／「？」
「後から現れた私が、襲名メンバー……よりによって佐江さんの近くをちょろちょろしている。親友だったなら尚更。恵さんが私を嫌うのは当然だと思います」
「っ、メグ！？」
「佐江さん、私は大丈夫です。むしろ心配されたら更に嫌われちゃいます」
何？ この子、何様なの？ 今もあのときも。レッスン中にいなくなったとき、どんな手を使ってまゆゆさんを味方につけたんだろう。
先月の休養日も、寮でゆきりんさんたちと一緒にいるのを見かけた。襲名にとっては貴重なお休み。その時間を研究生が奪うだなんて、何を考えているのかわからない。
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2022年10月21日 14時
