ラピスラズリ⑩【0048】 (ページ9)

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まさか、あの智恵理がここまで動揺するなんて。私は膝の上のトロフィーを片腕に抱え直す。一段一段、やっとの思いで登る智恵理を見ていたら…………駆け出していた。

足が上がらず、前に傾いた智恵理を間一髪で受け止める。はあーーよかった。智恵理ファンで私アンチの方、別に好感度上げようとか無いからね？同期で仲間に手を貸すのは当然だ。

ま……今回智恵理に負けた私が彼女を助けたことで、クソみそなDMを送らないでほしい気持ちもあるけれど。……私は、智恵理が悩んでいるのを知っている。それでも彼らは智恵理を選んだ。00のファンに悲しい顔をしてほしくない。

「大丈夫だよ智恵理」

「A、はあはあ……。ごめっ、ん。ありが、とう……」

「うん。智恵理、スピーチ……一人でも大丈夫？」

まだ呼吸は荒い。それでも智恵理は首を縦に振る。スタンドマイクのところに連れて行けば、6位と刻まれたトロフィーが彼女に渡される。それを胸に抱き、片方の手は私の肩からマイクの方に。

心配ではあるけれど、私は自分の席に戻る。トクサンに『智恵理ちゃん、頑張って』と言われていた。智恵理は顔を上げて、ついに口を開く。

『なっ……な、な。77期、研究生の……。園……園っ、智恵理ですっ！』

キーン。倒れはしなかったが、立ちくらみのようにマイクにぶつかってハウリングする、あちらこちらから緊迫した声が上がる。

智恵理は立て直しながら、必死で呼吸を整えようとしていた。まず名前を言って、そのあとは。智恵理が言おうとしている中には……もちろんあのことも。智恵理の出した結論、聞かせてもらおう。

『わ、わわ……私は。わたっ、私は……！

……………………！私は……ひぐっ、皆さんのことが！うっ、うう…………だ、だ、だっ、大好きですぅーーーー！！』

智恵理のキララが、輝いた。

まるであのときの裁判のときのように明るくて、眩くて、淀みのない光。涙腺が緩む。この場の誰もがそれに目を奪われたと思う。智恵理……！

『わ……わっ、私！これからも、AKB0048として……大好きな、大好きな皆さんと一緒に！走っていきたいです！！』

沈黙後、大きな歓声。「智恵理〜！！」って、あの一際大きな声は智恵理のWOTAさんだよね。握手会のときに聞き覚えがある。

それにしても……大好きって。ストレートだなぁ。AKB裁判での冷静な受け答えとは大違い。でも、すごく気持ちが伝わった。

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