456# それでも悔しい ページ6
▼
『えー……投票してくださった皆様。本当に、ありがとうございました……！ えっとぉ……にゃんにゃんは久しぶりの総選挙だし、みんなでワイワイできたら良いなって思ってました。
前は期待に応えられず選抜できなかったわたしが、今回の速報では……5位というすごい数字で、ビックリして。でも今日は、7位をいただいて。選抜に入れたし、わたしにはちょうどいい感じかなぁって、ホッとして！ …………うっ』
あっ………。こじはるさんの声が、途中から震えた。後ろのモニターにその顔がアップで映る。大粒の涙が溢れて、両方の頬も赤くなっていた。眉間にシワも寄っている。
あんなこじはるさん、初めて見た。ファンの人たちが、思わず「にゃーんにゃーーーん！」と呼ぶ。ともちんさんのときのように「頑張って〜！」と応援も。
そしたら。こじはるさんは『うわぁーん！ にゃん悔しいよ〜！！』と声を上げる。感情を爆発させてしまう。
……いつも明るいこじはるさんが、あんなに思いっきり泣ける場所。悔しいって、素直に言える場所。7位になれたけど悔しい。現状に満足できず、涙を流すこじはるさん。『充分』なんて失礼だった。
「総選挙ってすごい……！」
『来年こそ……来年こそ、もっと本気で。頑張りたいと思います！ 皆さん、ホンっトーにありがとうございましたー！』
▼Chieri
私の名前が呼ばれると思ってた。でも、いくら待っても呼ばれない。もし選抜落ちしていたなら……ううん、それは可能性として低い。
お父様がなぜ私を応援しているのかは分からない。けれど、ゾディアックという大企業が関わっているんだもの。私を選抜に入れるために汚いことをきっとしている。私の意志は変わらない。これ以上周りに迷惑をかけないためにも、私はアイドルを辞める。そう決めた。
私の速報順位で呼ばれたのはA。そして、ともちんさん。こじはるさんって続く。選抜の席は残り六。何位？ 私は何位で呼ばれるの？
みんな、あんなに立派にスピーチをしているのに。仲間は泣いているのに、私は泣けない。泣く資格さえない。私のせいで、私がいるから。……みんな、順位を落としたかもしれないのに。申し訳ない気持ちと、自分のことばかり。そんな私を現実に戻してくれたのは凪沙だった。
「…………！」
号泣していたこじはるさん。目の下を赤くしながらも、笑顔を浮かべる。『この悔しさをバネに、来年はもっと本気で』。
その姿に胸を打たれた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 41人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：東雲れーた | 作成日時：2023年7月13日 21時
