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船を下りれば、一列に並ぶよう促される。
そうしたらカーキ色の軍服をまとう男性たちが周りを囲んだ。少年は強制労働という名目だ、(まあ不可能だが)逃走を阻むためだろう。6人に対して、ぐるっと見渡す限りでも8人はいる。中には銃を携帯している者もいた。
中尉と呼ばれた男性が目の前に立つ。周りの男性たちとは少しばかり服装が異なる。髭を生やし、偉そうだ。
「貴様たちには、今日から補給部隊の雑務を担当してもらう。早く故郷に帰りたければしっかりと……働くことだ」
「「「はい」」」
「ヒガシノ二等兵！」
少年になりきる少女たちは、出せる限りの低音で返事をする。まず第一関門、不審には思われなかったようだ。中尉が呼びかけた方を視線で追う。それが彼だろうか。
当人はキョトン顔。どうして呼び止められたかわからないが、相手は上司。仕事の手を止めて、こちらへ。中尉は「仕事を教えてやれ」と命じた。ヒガシノは正直面倒だと思っただろう。自分は清掃中、偶然通りかかっただけだった。……しかし、嫌なんて言えばどうなるか分かっている。
上司と少年らを交互に見てから敬礼。アイアイサー、と応じた。
▽
ライブのセットリストを頭から通す。指摘されたところのみ再度繰り返し、葵平先生のOKをもらえたらレッスンは終了。私たちは急いでシャワールームへ。汗を落としに行った。
それを済ませたらライブの準備だ。先に衣装に袖を通すか、メイクなどを済ませるか。大体二手に分かれて準備を進める。こじはるさんが鏡台で髪型をセットする後ろでは、優子さんが着替えを行う。
どちらも終われば時間まで待機。気持ちを落ち着かせる方法はさまざまある。才加さんと佐江さんのようにストレッチをしたり、たかみなさんや美森さんのように会話をしたり。
「どうした？ ボーッとして」
「葵平先生……」
「潜入チームの子たちが心配？」
手すりに寄りかかって周りを見ていたら、葵平先生が近づいてきた。手持ち無沙汰と思われたらしい。そんな、まさか。やれることは全てやった。心残りなんてない。気がかりも特にありません。
そもそも私には、他人の心配をする余裕なんてない。その問いにも、自信をもってNOを告げる。
「ていうか。先生の方が、実は私より緊張してますよね」
「…………言うねぇ。才加から聞いたとおりだなぁ」
彼女の目は泳いでいる。
私と同じように手すりに背中をつけた。
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2023年7月13日 21時
