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妹がいたから、早くに厳しい教育が始まったから。Aは誰にもまともに甘えられずにここまで育ってしまった。言うことに説得力もある。歳以上の知識も。キャラ像もファンの中では固まっているから外にも出せない。
でも、実際は。妹キャラの姫子とAは一歳差。ていうかウチには一緒である。とりあえず向かいのテーブルにごはんを置いた。そろそろ手がしびれるのもあったけど。
「わっ…………、たかみなさん？」
「ウチでよければいつでも甘えにおいで」
今、Aは椅子に座ってるから撫でやすい。立ってたら……ちょっと難しいかも。多分届かない。腕伸ばしてギリだな。屈んでもらわなきゃ。
勿論自分だけじゃなくて。多分、佐江も同じこと言うと思うよ。才加やゆきりんなんかはAの事情をよくは知らないはず。だけど……あの二人なら『何かある』のは察していると思う。
「『いつでも』は非現実的かと」
「マジレスすんな。真面目か！」
「元ガリ勉なので。こう見えて根は結構真面目ですよ」
嬉しいです、ありがとうございます。こう言って軽く頭を下げた。Aはちょっと笑ってる。そうそう、Aはこういうところが可愛いの。
普段は厳しい寄りだから……ギャップ、ってやつ。恵たちからしたら新鮮だろうな。でもAって、ウチらといるときは結構ラフだよ。ちゃんと後輩。おそらく本人は意識してないと思うけど。
ただ後輩でも、ズバリ言うのは変わらないから小生意気に感じる瞬間もあるよ。けれどAにとってはそれも楽しいから。こっちは何ともいえなくなる。
「まあでも。クイズ番組に出演させていただくようになってからは、やっぱり勉強しなきゃなって。ガリほどじゃありませんが最近はやってます」
「Aのノートすごいんですよ。ボクはもう……何書いてるかわかんないです」
「恵さんが見たのはたまたま検定試験用だったから。地歴は読めばわかるでしょう？」
「いや、結構読めない文字あった。下手とかじゃなくて見たことないって意味で」
検定試験受けるの？ ……聞けば、ネットで受けるらしい。今は携帯に翻訳機能なんて当たり前の時代だ。それでも彼女は、言語系の試験を受けようとしていると。
Aにとって知識は誰にも奪われることがない財産。00で一位を獲る方法だから。この子は自分の場所を守りたい。脅かす者が現れようなら叩き潰すための努力を怠らない。智恵理に仕事を取られたこと、大分根に持ってるな。
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2023年7月13日 21時
